2025 年 7月 17日 (木)
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FAXの限界を超えた…韓国発AI企業「GMISSION」の挑戦

GMISSIONが発売したLLMソリューション「ダックスフント」=GMISSION(c)KOREA WAVE

ロールモデルはアメリカのパランティア(Palantir)。ビジネスモデルと非常に似ているからだという。AIを基盤とした業務自動化ソリューションを提供する韓国企業「GMISSION」を、最高のフロンティアAI技術を保有する完全統合型データ・AIプラットフォーム企業へと成長させる――同社のハン・ジュンソプ代表は、こんな抱負を語った。

新たに発表した生成AIベースの文書自動化ソリューション「ダックスフント(DXHUND)」と「リトリーバー(RETRIEVER)」を前面に押し出し、2030年までに売り上げ1000億ウォンを達成するという目標も立てている。

「ダックスフント」は、核心情報を自動で分類・要約・生成・分析するソリューションで、正式発売前からすでに口コミで広まり、公的機関、金融機関、大企業などで相次いで導入されている。「リトリーバー」は、カスタマイズされたインサイトを提供する大規模言語モデル(LLM)ベースのデータ処理および分析ソリューションで、証券業界を中心に多く活用されている。

ハン・ジュンソプ代表は「企業の業務におけるストレスの主な原因が文書理解と報告書作成であることに着目し、さまざまな非構造化文書からデータを抽出して業務に必要な報告書を生成できる『ダックスフント』を開発した」と述べ、「現在、公的機関ではAIファックスから光学文字認識(OCR)を経て、ファインチューニングされた小規模言語モデル(sLM)へとつながるインテリジェント文書処理ソリューションとして使用されている」と説明した。

「リトリーバー」は生成AIを活用して誰でも簡単に自身の業務データを分析できるソリューションを提供することを目的として開発した。自然言語による問い合わせで必要なデータを容易に取得できるのが強みだという。「データを忠実に追跡し再現するという点を強調し、利用者が覚えやすいように似たイメージを持つ犬の名前を使ってソリューション名を決定した」。ハン・ジュンソプ代表はこう説明した。

ハン・ジュンソプ代表がこのようなAIソリューションを最近発表するに至ったのは、これまで一貫してFAX市場に専念してきた結果である。ハン・ジュンソプ代表は1993年、事務機器の「シンドリコ」の代理店での勤務を始め、この市場に初めて足を踏み入れた。1997年にはその代理店を買収し、本格的に事業に目覚めた。その後、インターネット放送や「インク天国」「オフィス天国」などのフランチャイズブランドを次々と成功させ、業界内で注目を集めた。特に「インク天国」は、ハン・ジュンソプ代表の努力により韓国国内にとどまらず、日本やアメリカなど13カ国に進出し、一時は順調に業績を伸ばしていた。

「当時、海外に進出した韓国のフランチャイズブランドは多くなく、成功例もほとんどなかった。『インク天国』を通じて新たな海外市場を開拓し、業務提携協約(JBP)などの概念を導入して、フランチャイズ企業へのコンサルティングも多く手掛けた」

しかし、現地のビジネス文化による障壁に阻まれ、グローバル進出から4年で失敗を経験した。ハン・ジュンソプ代表は「グローバル創業研究所」を設立し、スタートアップや3Dプリンター分野へ進出し再起を図った。また、レッドオーシャンとされていたFAX市場でも再びチャンスを見出し、公的機関を一つずつ攻略していった。

「インターネットが活性化していなかった2000年代にはFAX市場への関心が急増し、ファスンのような大企業から中小企業まで、すべてが競争に飛び込んだ。しかし、徐々に企業が姿を消していき、インターネットやウェブメールの登場によりFAX市場は見向きもされなくなった」

警察庁など一部の機関では、依然としてFAXが公的文書としての効力を持つため、需要が多く存在した。主要な顧客企業がFAX技術の高度化を多様に求め始めたことで、新たなチャンスを見つけることができたという。

こうした中、ハン・ジュンソプ代表は2020年、ピボット(中核事業の転換)に打って出た。ウェブFAXソリューション専門企業「GMISSION」をAI新法人として再編したのだ。

投資を受けずとも、堅実なAI FAX技術を基盤に、2024年には急速に売り上げ65億5000万ウォンを達成。今年はすでに80億ウォンの受注を獲得しており、売り上げ100億ウォンが期待されている。ハン・ジュンソプ代表は来年に150億ウォン、2027年には300億ウォンの売り上げ達成を目標としている。

「FAXで住民番号を自動認識し、その部分だけを削除して送信する、あるいは内容を要約・翻訳して送信することを求める顧客がいた。それに対応して技術を高度化していくうちに、機械FAXからウェブFAX、アプリFAX、セキュアFAX、AI FAXへと市場が自然に発展してきた」

こうしたレッドオーシャン市場の中でもブルーオーシャンの可能性を信じて着実に事業を展開してきた結果、現在AI FAX市場で圧倒的な1位の座を維持している。現在、約300の機関が同社の技術を利用しており、最近では日本など海外からの問い合わせも続いている。

「レガシー産業にあったGMISSIONをAIへとピボットしたタイミングで、AIブームが起きたことで瞬く間に注目を集める企業となった。おかげで最近ではAIを導入しようとする既存の製造業者からの問い合わせも多く寄せられている」

ハン・ジュンソプ代表(c)KOREA WAVE

ハン・ジュンソプ代表は、GMISSIONの成功要因として「非構造化文書」をデジタル資産として抽出する光学文字認識(OCR)技術を挙げている。GMISSIONは公共および金融市場でAXプロジェクトを推進する際、自社開発のディープラーニングベースAI OCRソリューションと自然言語処理アルゴリズムを適用し、非構造化文書からテキストを抽出することで、AIモデルおよび生成AI学習用データセットを構築することに成功したと評価されている。

この強みを生かして、GMISSIONは現在、バーティカル生成AI市場の攻略にも積極的に取り組んでいる。特に、公共、金融、法律、医療などの専門分野における非構造化文書をGMISSIONのAI文書抽出技術を用いて、sLMモデルを容易に構築できるサービスを開発中だ。また、多様な形式の契約書、運用指示書、発注書などの核心項目やチェックポイント、印鑑を照合する「契約書分析ソリューション」もリリースし、新たな市場の開拓を進めている。

「当社の非構造化文書処理技術は競合他社より優れており、市場競争力も十分にあると自負している。公共や金融分野に加え、AXへの転換が急務である法律、医療分野にも進出する考えだ。アメリカだけでも医療機関の70%が患者情報の送信にFAXを利用している。法律市場でもFAXでのやり取りは原本と同等の効力を持つ文書記録と認められている点を踏まえ、顧客に最適化された営業活動を通じてこの市場でも積極的に領域を拡大する」

そのほか、GMISSIONは犯罪者の追跡や建設現場での転倒、倒れ込み、ヘルメット未着用などを自動検出する防犯カメラベースのAI映像分析ソリューション(DEXMA)も構築している。また、有人対応をなくし、チャットボットや相談ボットでコンタクトセンターを再構築するAIコンタクトセンター(AICC)、可視化された音声案内(ボイスARS)、字幕サービスを中心としたAIウェブFAX(WEBPACK)ソリューションも保有している。さらに、報道資料を生成AIが自動作成するサービスも一部の機関で既に活用されている。

このように多様な技術を持つGMISSIONは最近、政府が推進する国家戦略事業「イノベーション・プレミア1000」企業にも選定された。さらにベンチャー企業認定、イノビズ(技術革新型中小企業)、GS認証など各種の特許および知的財産権も保有している。

ハン・ジュンソプ代表は「今後は国内を越え、海外展開にも本格的に乗り出す。カナダとアメリカから始まり、日本やインドネシア、マレーシア、ベトナムなどのソフトウェアチャネル事業者とMOUを締結し、AXグローバル事業部を通じて市場の動向を積極的に把握している。グローバル市場進出に向けて、SaaS(サービス型ソフトウェア)ベースで独自のソリューション開発にも集中しており、現地市場調査を通じて適切なビジネスモデルの構築にも力を入れる」と述べた。

(c)KOREA WAVE

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