
◇ドラマを動かす“2030世代”の存在感
――パク・ソンスさんは韓国の20~30代女性に注目されています。
「『2030女性』たちですね。彼女らの創作欲求やエネルギーに注目しています。彼女らは未来に対して不安を感じています。就職も不安定で、ジェンダー問題などの影響もあって、非常に不安定な世代です。実は、作家志望の学生のほとんどが『2030女性』なのです。たとえば、私が『瞑想講座』などの“価値を求める場”に行くと、『2030女性』で埋め尽くされています」
「『2030女性』は、目の前の現実よりも『どう生きるべきか』といった価値への関心が非常に高く、創作への関心も非常に強いです。YouTubeやモバイル、Instagramなどを通じて写真を撮ったり、文章を投稿したりして、創作活動を積極的に展開しています。どの世代よりも価値観や創作に対する関心が高く、またドラマにも強い関心を持っていて、非常にパワフルなドラマの消費者です。作家がロマンスやファンタジー、ビューティー、料理などさまざまなテーマでドラマを書く際に、同時に消費者であり創作者でもある彼女らの存在が非常に重要なのです」
◇100回の失敗が道をひらく
――脚本家になるために特に重要な経験とは何でしょうか。
「それは『失敗をたくさんすること』です。失敗を恐れず、何度もトライすることで、そこから学ぶものがあると考えています。そして、失敗を恐れずに地道に進んでいけば、必ず何か得られるものがある、というのが、私自身の経験でもあり、信念でもあります。もちろん、私は『韓国式ストーリーのつくりかた』の中で、作家になるための20の資質を挙げましたが、それぞれが完全に独立して存在しているわけではなく、互いに連動しあっています。たとえば『無限の想像力を発揮せよ』といった項目もありますが、想像力を発揮するには、ただ安全な道ばかり歩いていては難しいんです。失敗してもいい、失敗するかもしれないけど挑戦してみよう、という気持ちがあってこそ、新しい道が開ける。初回では無理でも、10回、100回と繰り返す中で、何かしらの突破口が見えてくると思います」

「私はこの考えを、自分の息子にも伝えたいと思っています。実は、大学受験に失敗した息子にこの本を読ませたかったのですが、なかなか読んでくれなくて……。『大学に一度落ちたくらい何でもない。もっと勇気を持って、何度でも挑戦しよう』と言いたいのですが。確かに、試験だけでなく、どの分野においても『失敗が怖くて挑戦できない』という不安はあると思います。そして、成功した人が『失敗してもいい』と言うのを聞くと、まだ成功したことのない人にとっては『それは成功したから言えるんでしょう』と思ってしまうかもしれません。そうした人たちに『失敗は必要だ』『成功するためには失敗が避けられない』と説得するにはどうすればいいのか、それが私の関心事でもあります」
「そういう人たちには、私は『失敗』というよりも、まずは心や体の状態に向き合うことを勧めます。たとえば、軽い運動、走ってみることなどから始めてみてはどうかと。体を動かすことで、気持ちも少し軽くなるかもしれません。『もう一度挑戦しろ』と急かすのではなく、まず体を動かして、心を少し軽くして、それからでいいと伝えます。そして私が伝えたいのは『成功はそれほど大事ではない』ということ。成功しなくてもいい。大事なのは、きょうをどう過ごすかなんです。きょう、美味しくご飯を食べて、少しでも動いて、散歩して、健康に過ごせば、それだけで十分。何もしていなくても、寝てばかりでなければ、それでいい。それを私は大事にしてほしいと思っています」

◇「幸せ」はプロセスの中にある
――監督としてヒット作を出しても、次の作品がヒットするかわからない。この不安にどう向き合っているのですか。
「結果や成功に執着しないことこそが、むしろ成功への道だと考えています。これまで、欲が強く、成功に執着している人をたくさん見てきました。そういった人たちは、たとえ成功してもあまり幸せそうには見えませんでした。非常にストレスが多く、欲も強い。たとえ成功しても“あれ?これだけ?こんなもの?”と感じてしまうのです」
「私自身は、ヒット作もあり、多くの評価も受けてきましたが、振り返ってみると、『幸せ』とは『成功』そのものではなく、その『プロセス』だったと言いたいです。『幸せ』というのは、例えば、ある本を読んだ時、何かをメモした時、会議で話し合った時、撮影のためにどのショットにするかを考えていた時――そういったプロセスこそが『幸せ』だったのです。最終的に賞をもらったりするのは、ただの付加的なものでしかありません。だから私が本当に伝えたいのは『作家になる』という結果よりも『作家になっていくプロセス』を楽しんでほしいということです」
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