2025 年 7月 20日 (日)
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[KWレポート] 韓国ドラマ制作者が明かす「ヒットの内側にあるもの」 (中)

パク・ソンスさん=本人提供(c)KOREA WAVE

◇「キャラは“立体”でなければならない」

――魅力的なキャラクターを作り上げるのに必要な要素とは?

「私自身も『主観的な魅力』ではなく、『一定の基準』を持っています。その基準を私は今回の本に書いています。簡単に言うと『キャラクターが立体的であること』です。私はこれを『キャラクターボックス』と呼んでいます」

「主人公には6つ程度の立体的要素が必要だと考えています。なぜ立体的でなければならないのか? 視聴者が多様だからです。その多様な視聴者が『この一面は私と似ている』と感じると、視聴者はそのキャラクターに親しみや絆を感じるのです。『自分と同じだ』と思えるように。だからこそ、立体的なキャラクターであれば、さまざまな視聴者とどこかで接点を持ち、キャラクターと視聴者が絆を築くことができ、ドラマに没入できるのです」

「また、立体的なキャラクターには『弱点(脆さ)』が不可欠です。加えて『能力』や『魅力』も必要です。弱点を通して視聴者は共感や同情を抱き、能力と魅力によってそのキャラクターが困難を乗り越えていくと信じられるのです。ですから、主人公キャラクターの魅力は、単なる主観ではなく、私なりに研究や読書、経験を通して『こういうキャラクターこそが魅力的だ』と確信を持って導き出したものなのです」

「それは人間らしさですね。うまくできない部分もあれば、優れている部分もある。さまざまな側面があるからこそ人間だということです。でも、主人公である以上は、魅力や能力も備わっていなければなりません。人間としての弱点や脆さもあって、例えば『ウ・ヨンウ弁護士は天才肌』を見ると、彼女は天才的な弁護士でありながら、自閉症という障害を抱えています。自閉症という脆弱性と、天才的な記憶力という優れた点。このように脆さと能力が結びついた時、そこに温かさがあり、そして人間の勝利のドラマが生まれるのです」

――魅力的なキャラクターを創造するには、日々、どのようなことを心掛ける必要があるのでしょうか。

「自ら率先して人間関係を築き、その過程で泣いたり怒ったりするような経験が必要だと思うんです。つまり、作家というのは絶えず『人について学ぶ存在』であるべきだということです。心理学でも歴史でも、どのような手段を通じてでも人間を学ぶ学者のような存在だと私は思っています。だからこそ、人間を知らなければならないし、自分自身も知らなければならない。より深く人間を理解してこそ、視聴者の心に届く作品を送り出せるのだと思います」

ノーベル文学賞を受賞した作家ハン・ガン(韓江)さん(c)news1

◇“社会の傷が物語を生む

――韓国社会には格差、分断、南北葛藤など、さまざまな困難があります。そうした葛藤こそが逆にドラマに深みを与えているのではないかと考えます。

「韓国社会には、社会・政治・経済と多くの問題があります。制度上の問題もあり、さまざまな政治的対立や、ヘイト問題など多くの課題が存在しています。私は、人類の歴史において『離別』『失恋』などのテーマがなかったら、驚くような芸術や文化作品は生まれなかったのではないか考えます。もしゴッホが恋愛に成功していたら、あれほどの素晴らしい作品が果たして生まれただろうか……。多くの芸術家や創作者が、悲しみを抱えて心が苦しくなった時に詩を書いたり、小説を書いたりします。ですから「愛に失敗するということは人類にとっての祝福だ」と言えるかもしれません」

「そうした意味で、韓国社会の多くの問題が、創作者たちにとって作品の源泉となり得るのではないかと思います。歴史的にもそうです。例えば、ノーベル文学賞を受賞した作家ハン・ガン(韓江)さんも、韓国の大きな痛みである『光州事件』を題材に小説を書いています。また、多くの読者に親しまれている作家たちは、韓国の時代背景の痛み、あるいは貧富の格差や戦争、南北分断といったテーマを通じて優れた小説を書いてきました。こうした社会的葛藤を文化的・芸術的に昇華する力があると思います。そうした作品はより深い葛藤、より深い感動をもたらすことができるのだと感じます」

(c)KOREA WAVE

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