時は1970年代末。成熟した婦人服が主流だった韓国のファッション市場にジーンズとTシャツを前面に押し出したブランド「トムボーイ(Tomboy)」が登場した。「千万回変わっても私は私」という挑発的広告コピーは、先輩世代から「生意気だ」と悪評だった。
1977年、チェ・ヒョンロ会長(故人)が設立したトムボーイは、第1世代ファッションブランドだ。「中性的な少女」を意味するトムボーイは、かつて韓国に存在した繊維会社「第一毛織」に代表されていた、当時の婦人服の流行を一気に覆した。
男性のようなショートカットヘアに半ズボンをフィットしたトムボーイファッションは、価格面でも通念を覆し、70年代・80年代の「新世代」(現在50代)を魅了した。トムボーイは国内ファッション業界で初めて単一ブランドとして売上1000億ウォンを記録し、国産ファッションの強者に成長した。
しかし、2006年にチェ・ヒョンロ会長が世を去り、2008年のリーマンショックで深刻な資金難に陥った。2010年7月、トムボーイは16億ウォンの手形を決済できず、不渡りを出して証券市場で上場廃止される。翌2011年、トムボーイは新世界インターナショナルに買収された。
◇45年ぶり復活
悲運のブランド、トムボーイが2022年、新世界インターナショナルの手によってMZ世代の代表ブランドとして華麗に復活した。ブランド誕生45年ぶりだ。
新世界インターナショナルはこのほど、第1四半期の営業利益が331億ウォンで前年比55.4%増加したと公示した。同期間の売上高は3%増えた3522億ウォンで、史上最高の第1四半期の実績を更新した。特にスタジオトムボーイの第1四半期の営業利益が昨年4億ウォンから今年33億ウォンへ725%も上昇した。
最近、国内ファッション専門誌F社が2030女性を対象に好むファッションブランドを調査した結果によると、スタジオトムボーイが堂々1位を占めた。旬が過ぎたブランドでつぶれそうになったトムボーイが、45年ぶりに最高人気ブランドとして復活したのだ。
MZ世代がトムボーイに熱狂したポイントは、本人のサイズよりワンサイズ大きい「オーバーサイズ」。楽なルーズフィットに中性的なデザインで、無意識のうちに気さくなイメージを醸す。
新世界インターナショナル関係者は「ここ数年間、ファッション業界の話題になった『ジェンダーレス』トレンドがスタジオトムボーイのブランドヘリテージとぴったり一致した。他の婦人服ブランドは流行によってデザインを変えたが、トムボーイは特有の中性的な感性とアイデンティティをそのまま維持してきた」と説明している。
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