韓国で出生率ショックが深刻化している。政府は、世界最低の出生率を引き上げるために、巨額の予算を投入し、各種対策に乗り出したものの、成果が乏しい。支援金などの出産インセンティブにとどまる少子化対策を、根本から変えるべきだとの指摘も出ている。
統計庁によると、昨年の合計特殊出生率(女性1人が一生産むと予想される平均出生者数)は前年比で0.06人下がった0.72人となり、史上最低を更新した。
経済協力開発機構(OECD)の加盟38カ国のうち、合計特殊出生率が1人未満の国は韓国だけだ。OECD平均の1.58人に半分にも満たない。
新型コロナウイルスの影響はなくなったが、今年も下落傾向は止まらず、0.6人台に下がりそうだ。
漢陽大学国際学大学院のチョン・ヨンス教授は「パンデミックが終わり、出産の前提となる婚姻件数は増えたが、出生率は過去5年と似たような傾向だ。もしパンデミックが続いていれば、数字はさらに悪かっただろう」としている。
しかし、政府の対策は遅々として進まない。これまで政権交代すると、5カ年単位で少子化・高齢社会基本計画を修正するが、ユン・ソンニョル(尹錫悦)政権は3年目の現在も、まだ4次基本計画(2021~2025年)の修正版すら出していない。
国会予算政策処などによると、政府は2006年から18年間、少子化対応に約380兆ウォン(約43兆円)の予算を執行した。長期で莫大な予算を投入したが、出生に関する指標は改善どころか、悪化の一途を辿っている。このため、少子化政策を根本から変えなければならないという指摘が出ている。
チョン・ヨンス教授は「巨大な予算を毎年増やしたにもかかわらず、成績表がむしろ悪くなった。子どもを産む意志がある既婚者だけに有利な『福祉政策』から抜け出し、青年たち全体に向けた『人生・生涯政策』に転換することが必要だ」と語る。
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