
韓国国内の美術展に若年層を中心とした観覧客が殺到し、「10万人突破」はもはや標準、50万人を超える「メガヒット展」も相次いでいる。かつては一部の関心層に限られていた美術鑑賞が、今や20~30代を主力とする文化消費のひとつとして定着しつつある。
代表的な例が、今年上半期に観客53万人を動員した英国の現代彫刻家ロン・ミュエック展だ。巨大な人間像というインパクトある作品と、わかりやすく構成された展示が口コミで拡散し、連日「オープンラン(開館前の行列)」が続いた。その他、3月まで開催された「不滅の画家-フィンセント・ファン・ゴッホ展」も50万人を突破、地方巡回した「モネからアンディ・ウォーホールまで」も30万人を記録した。
このような現象を支えているのが20〜30代の若者たちだ。ロン・ミュエック展の観覧客のうち、この世代の割合は70%を超えた。韓国のあるギャラリー関係者は「若い世代の来館が目に見えて増加しており、広報もSNSやオンラインコミュニティを活用している」と語る。
韓国は世界的に見ればまだ「美術不毛地帯」に近い。統計庁によると、2024年に1回でも美術展を訪れたことのある人は人口の5.6%に過ぎず、美術市場の取引規模も2023年基準で6695億ウォン(約770億円)と、中国(約13兆ウォン)や英国、フランスに比べて極めて小さい。2022年をピークに取引額も下落傾向にある。
こうした状況で「大ヒット展覧会」は、美術市場全体にとって大きな希望となっている。観客の増加は、入場料収入だけでなくスポンサーの関心や投資の呼び水となり、展示運営の経済的基盤が強化される。マルク・シャガール特別展の主催側は「未公開の原画を多く借用した今回の展示は、投資面でも手応えが大きかった」と話す。
一方で課題もある。展示が首都圏に集中し、地方では鑑賞機会が極端に限られている。文化体育観光省の2025年4月の地域文化実態調査によれば、広域自治体が主催した文化芸術活動は2641件に対し、基礎自治体はわずか195件にとどまっている。
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