ソウル大電気情報工学部のユン・ソンノ教授のデータ人工知能(AI)研究チームが国際AI学術大会で盗作論文を発表し、波紋が広がっている。
ユン教授は韓国の第4次産業革命委員会委員長(閣僚級)を務めた大物学者。ユン教授の弟子で博士課程のキム某氏が「第1著者として自分に全面的に責任がある」と主張する一方で、交信著者(論文のデータと研究結果・証明、著者の表示順序・役割で総括的な責任を負う立場)のユン教授も盗作を把握できなかったとして、批判にさらされている。
ソウル大は27日、オ・セジョン総長の職権でユン教授研究チームの論文に対する調査委員会を開くと明らかにした。委員会は盗作の経緯や範囲などを調べるものと見られる。
◇国際的学術大会に10編の論文
ユン教授の研究チームは23日、コンピュータビジョン領域で最高峰の国際会議「コンピュータビジョンとパターン認識」(Computer Vision and Pattern Recognition=CVPR)で論文を提出、優秀論文に選ばれ、口頭発表セッションに参加した。論文に参加した研究者はユン教授やキム某氏を含め6人。共著4人の中にはイ・ジョンホ(李宗昊)科学技術情報通信相の子供が含まれるという。
ところが論文発表直後の24日、YouTubeに「E2V-SDER:How I Learned to Stop Worrying and Love Plagiarism」というタイトルの映像がアップされた。不詳の投稿者は「該当論文が国内外の先行論文10編余りを盗作した」と指摘、該当論文はそれら論文の文章をそのままコピーした部分が少なくないことが明らかになった。
ユン教授は盗作を認め、該当論文を撤回した。第1著者であるキム某氏は「すべての過ちが全面的に自分にある」と述べ、自身の責任である点を強調している。CVPRもTwitterで、国際電気電子工学会(IEEE)に通報し、調査を依頼したと明らかにした。
◇ユン・ソンノ氏「盗作は知らなかった」……責任はどこに
問題が大きくなり、関係者のレベルを超えて、ソウル大や国内のAI学界の信頼が失われるのではないかという懸念が出ている。
他のAI論文でも盗作の有無について調査すべきだという声が広がるとともに、2004年の論文ねつ造で世界的な批判を受けた韓国クローンES細胞ねつ造事件の再現ではないか、という声も出ている。
ユン教授は論文盗作を認めながらも「第1著者の単独犯行」と強調し、盗作への関与を否定している。数人の共著者が文章を作成して第1著者に送ったのに、第1著者がそれを使わず、他の論文の表現をコピーしていた。つまり、共著者も盗作に関与していなかった、と主張しているのだ。
ただ、この点について、科学技術関係者は「ユン教授は、自身が交信著者であるとして名前を載せた論文なのに、盗作を知らなかったと主張するのは無責任で性急な言動」と指摘。「国内AI学界研究成果に対する信頼を損なう行為」と批判した。
また、AI分野で世界最高権威の学術大会に挙げられるCVPRが、論文盗作の可否を確認しないまま発表した、という点にも批判が相次いでいる。
米国で博士課程を修了したある研究員は「学術大会で発表する論文は出版前の状態であり、国際的な規模の学会であっても、主催側は盗作をしっかりと確認をしない傾向がある。そもそも“盗作しているのでは”と考えて作業をするわけではない」と説明した。
加えて、共著者に現職の科学技術情報通信相の子供が含まれたことで、騒ぎがさらに大きくなっている。
今回の論文に、科学技術情報通信省の研究開発委託管理機関「韓国研究財団」と「情報通信企画評価院(IITP)」の予算が投入されたことが確認されている。同省関係者は「大臣もこの事実を認知している」といい、省内でイ・ジョンホ氏の子供が研究にどこまで関わっていたのか、事実関係を調べていると明らかにしている。
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