
韓国では近年、肥満治療薬として注目されているGLP-1(グルカゴン様ペプチド-1)系注射薬「ウゴービ」や「マンジャロ」が登場する以前から、市販されていた麻薬性の食欲抑制剤が依然として20〜30代の女性の間で広がりを見せていることが明らかになった。
これらの食欲抑制剤は、向精神薬に分類される麻薬性医薬品で、短期間の減量効果が期待される一方、依存や耐性が生じやすく、長期服用により抑うつ、不眠、心疾患などのリスクがある。そのため、処方の適正性について見直しが求められている。
国会保健福祉委員会所属の与党「共に民主党」のチャン・ジョンテ議員の議員室が、食品医薬品安全処から提出を受けた「麻薬性医薬品処方現況」によると、食欲抑制剤の処方患者数自体は減少傾向にあるものの、1人あたりの処方量は減っておらず、とくに20〜30代の女性層で依存傾向が見られた。
2024年の20代女性の処方患者数は13万3135人で、前年より約10%減少。30代女性も25万3075人から23万6481人へと約6%減った。しかし、30代女性の1人あたりの処方量は2023年と同様に255.6錠で、全世代・性別の中で最も多かった。つまり、服用を始めた人の使用量は依然として高い水準にある。
韓国内で承認されている麻薬性食欲抑制剤には、フェンテルミン、フェンジメトラジン、ジエチルプロピオン、マジンドールなどがある。これらは脳内のノルアドレナリン、ドーパミン、セロトニンの分泌を促進して食欲を抑えるが、依存性や副作用のリスクが高く、医療用麻薬として指定されている。
食品医薬品安全処は2020年に「医療用麻薬性食欲抑制剤の安全使用ガイドライン」を制定し、4週間以内の短期処方、最長3カ月までの使用、複数薬剤の併用禁止などを勧告している。ただし、こうした規制が現場で徹底されていない可能性がある。
同処は、過剰処方が疑われる医療機関に対し継続的な点検を実施しており、近年ではSNSやダイエット系のオンラインコミュニティを通じた違法購入の動きも確認されており、監視体制の強化が進められている。
チャン・ジョンテ議員は「処方患者数がやや減少したからといって、問題が解決したとは言えない。1人あたりの処方量が変わらないのは、依存から抜け出せていないことの証拠だ。ガイドラインの強化とともに、政府による乱用防止教育を積極的に推進すべきだ」と訴えた。
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