
韓国で急増する無人店舗の利便性が注目を集める一方で、利用方法が複雑で高齢者をはじめとしたデジタル弱者の利用が困難であるという課題が浮き彫りになっている。
韓国ではここ数年、カフェやコンビニ、アイスクリーム店、花屋まで無人化が進み、無人店舗数は2023年時点で6300カ所を超えた。4年間で18倍以上の増加となっている。
しかし、デジタル機器に不慣れな高齢者らの多くがその利便性を享受できていないのが実情だ。
京畿道のパク・ミンシクさん(67)は「夜遅くでも明るくて安心そうだったので、初めて無人店に入ってみた」と話す。だが、商品を手に取ってレジに向かっても、支払い方法が分からず、そのまま店を後にしたという。
「聞こうにも誰もいない。若い人と違って、私たちは慣れていないんです」。こう肩を落とした。
無人店舗の利用に苦労しているのは高齢者ばかりではない。大学生のキム・ジヨンさん(22)も「初めての店では手順が分からず迷う」と話す。「プリントカフェでカード登録や印刷までの流れが複雑な上に、説明書も理解しづらい。結局40分くらい滞在してしまったこともある。店によって利用方法が異なり、初めて行く場所ではその手順の違いに戸惑うことも多い」と困惑をにじませた。
現在、無人店舗はカフェ、ゼロシュガー商品専門店、花屋、ガソリンスタンドの売店まで広がり、多様な業種で展開されている。だが、店舗ごとに異なる利用システムが心理的なハードルとなっている。
専門家は、人件費削減を目的とした無人化は今後も加速すると見通しつつ、デジタル弱者への配慮が欠かせないと指摘する。
仁荷大学のイ・ウニ名誉教授は「無人店舗が増えると、生活必需品を自ら購入できない不安に陥る人が出てくる。これは消費生活における福祉の侵害に該当する。言葉が通じない海外での買い物に戸惑うのと同様に、技術の壁が新たな格差を生んでいる」と警鐘を鳴らす。
イ・ウニ氏は、地方自治体主導で「無人店舗の利用方法を教える教育プログラム」の整備を求めた。特に高齢者比率の高い地域では、店舗数の規制も選択肢になると提案している。
仁川大学のイ・ヨンエ教授は「デジタル弱者は情報格差の影響を最も受けやすい。使い方が分からず割高なサービスに頼らざるを得ない場面もある」と問題点を挙げたうえ「政府や関連団体が主導して、教育機会を量的に拡充することが必要だ」と強調した。
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