
韓国に定着した脱北者(北朝鮮からの脱出住民)のうち、家族や親類など頼れる存在もなく1人で生活する中で死亡する「無縁死(孤独死)」の件数が近年急増している。高齢化の進行に加え、新型コロナウイルス流行による経済的・精神的ダメージが大きく影響しているとみられる。
脱北者支援機関である南北ハナ財団によると、2025年1月~11月までに安置された無縁死脱北者は計35人で、統計開始以来、最多だ。
同財団は統一省傘下にあり、地方自治体と連携しながら、遺族のいない脱北者の公営葬儀や納骨などを支援している。
過去の無縁死脱北者数を見ると▽2018年:5人▽2019年:7人▽2020年:7人▽2021年:3人▽2022年:19人(コロナ禍で大幅増)▽2023年:13人▽2024年:22人▽2025年:35人(※11月時点)――となっている。わずか4年で約10倍の増加となった。
無縁死の主な原因としては、まず脱北者社会の高齢化が挙げられる。ただ、今年の死亡者35人の年齢別の内訳は▽30代:4人▽40代:5人▽50代:9人▽60代:8人▽70代:3人▽80代以上:6人――で、うち約半数(18人)が30~50代だ。このことから、「単なる高齢化だけでは説明がつかない」という指摘も出ている。
統一省関係者は「死亡者が急増し始めたのは2022年からで、今後の調査と分析が必要」としながらも、「コロナ禍以降、脱北者が韓国社会で感じる経済的・心理的困難が一層深刻化した可能性がある」と述べた。
脱北者の多くは韓国社会において職業的な安定や社会的つながりを築くのが難しいとされており、コロナ禍での景気後退や社会的孤立が一層の打撃を与えたとみられる。
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