2025 年 11月 18日 (火)
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韓米、戦時作戦統制権の転換に向け一歩…「任期内移管」視野に入るも、残るは検証のハードル

11月4日、共同で記者会見に臨むアン・ギュベク(安圭伯)国防相(右)とヘグセス米国防長官=国防省提供(c)news1

韓国と米国は11月14日に発表した第57回韓米安保協議会(SCM)共同声明で、戦時作戦統制権(戦作権)の転換に向けた3段階評価・検証のうち、2段階目にあたる「完全運用能力(FOC)」の検証を2026年に実施することで合意し、イ・ジェミョン(李在明)大統領の任期である2030年6月末までの戦作権転換が視野に入った。

戦作権とは、朝鮮半島で戦争や、戦争に準ずる事態が発生した際に、韓米連合戦力を指揮・統制する権限を意味する。現在は在韓米軍司令官が兼務する韓米連合司令部の司令官がこれを保有しているが、転換後は韓国軍大将が指揮する「未来連合司令部」体制へ移行し、韓国側の軍事的自律性と責任が強化される。

韓米は2006年以降、戦作権の転換に向けて▽初期運用能力(IOC)▽完全運用能力(FOC)▽完全任務遂行能力(FMC)の3段階で評価と検証をする方針を共有してきた。IOCは2019年に評価、2020年に検証を終え、FOCの評価も2022年に完了している。韓国政府は、2026年にFOCの検証を実施したうえで、転換年度を設定し、その1年前にFMCを検証する構想を持つ。

FMC段階は「定性的」な評価が中心となるため、韓米双方の「政務的判断」によって進展が加速する可能性もある。一方で、これまでの進行がその判断に大きく左右されてきた経緯もあり、実際に転換が実現するかどうかには依然として不透明感が残る。

FOC評価だけでも3年を要したことから、検証開始の遅れについて韓米当局から明確な説明はない。北朝鮮の核戦力高度化、ロシアによるウクライナ侵攻、米中対立といった国際情勢の影響が複合的に絡んだとする分析が一般的だ。

戦作権転換の時期は、トランプ米政権の安全保障政策にも左右される。2028年まで続くトランプ政権下で3段階の検証が完了しない場合、次期政権の政策次第では転換議論が棚上げされる懸念もある。

戦作権転換には▽韓国軍の連合防衛主導能力の確保▽北朝鮮の核・ミサイルに対する包括的対応能力の構築▽転換に適した安全保障環境の整備――という3条件が課されている。だが、後者二つは政務的判断が可能な内容であり、とりわけ北朝鮮の核・ミサイル能力が高度化を続ける中で、「対応可能な時点」を見極めるのは困難との指摘もある。

さらに、戦作権を実質的に行使するために韓国軍が自前で整備すべき能力も多岐にわたる。米軍が提供してきたC4ISR(指揮・通信・情報・監視・偵察)機能や長距離打撃力、リアルタイムでの標的識別能力などを韓国側が短期間で代替するには、数十兆ウォン規模の投資が必要とされる。

国防省関係者は「韓国軍が独自で備えるべき能力と、米国が提供する持続的支援の両方が必要だ」と述べたうえで、「戦時・平時を問わず韓国軍指揮官が作戦を主導できるよう、日常的な訓練で連合態勢を維持することが重要だ」と強調した。

(c)news1

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