麻薬犯罪は、韓国のユン・ソンニョル(尹錫悦)大統領が乗り出して特段の措置を要求するほど、最近は深刻な社会問題として浮上している。警察も検察も麻薬捜査に全力投球をせざるを得ず、両機関のトップが退路を断つ理由もここにある。
麻薬捜査はユン・ヒグン警察庁長官が就任後、チョンセ(韓国独特の賃貸住宅制度の住宅保証金)詐欺に続いて根絶を約束した2番目の社会問題だ。ユン長官は昨年9月、「麻薬事犯は個人だけでなく社会を病ませる慢性的病理現象」「総力対応で根絶する」と明らかにした。
1カ月後の10月、ハン・ドンフン(韓東勲)法相も最高検察庁に麻薬犯罪厳正対応を指示し、「犯罪と戦争をするという覚悟で最善を尽くしてほしい」と要請した。
麻薬犯罪捜査権の調整は昨年9月、「検捜完剥」施行とともに始まった。これは検察が直接捜査できる犯罪が既存の6大犯罪の中で腐敗・経済の2種類に制限されたことが骨子だ。
検察の捜査権限が減ると、法務省は妙策を打ち出した。「検捜完剥」が検事捜査範囲を施行令に委任した点を活用し、所管省庁である法務省が施行令改正で上位法無力化に乗り出したのだ。
◇麻薬犯罪根絶と予防に効果的な捜査方式
同年8月、法務省は施行令である「検事の捜査開始犯罪範囲に関する規定」を改正した。いわゆる「検捜原復」(検察捜査権原状復旧)と呼ばれる改正施行令により検察は「麻薬単純所持・使用・運搬・管理・投薬・保管犯罪」を除く麻薬類管理に関する法律第58条から第64条が指定した犯罪の直接捜査が可能になった。
すなわち施行令改正以前には「輸出入」目的で麻薬を所持・所有した犯罪だけを検察が直接捜査ができるという規定だけがあったが、麻薬類「流通」犯罪が経済犯罪として新しく定義され、検察が直接捜査できる範囲が事実上、原状回復したのだ。
一線では捜査権調整による麻薬捜査協力に限界もあらわれている。検捜原復で検察の麻薬捜査の敷居が再び低くなり、警察内部の不満の声も大きい。
麻薬捜査を担当する警察関係者は「麻薬犯罪は幾何学的に増えているが、情報共有など検察と効果的な協力がなされていないと感じる時が多くなった。捜査権限の大きさや成果ではなく麻薬犯罪根絶と予防に効果的な捜査方式とは何なのかがより重要だ」と指摘している。
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