
生成AIの進化が、MZ世代(1980年代~2000年代初旬の生まれ)のインターネット文化を大きく変えつつある。かつて2000年代初頭に掲示板サイトで流行した「合成写真」や「パロディ画像」が、いまやAIによる映像や音楽作品として進化している。
最近では、韓国のメッセージアプリ「カカオトーク」の新機能「友だちタブ(フィード)改編」への不満が、「カトクポップ(カカオトーク+ポップ)」と呼ばれる風刺動画としてSNSで急拡散している。
音楽生成AI「SUNO」や「Udio」、映像生成AI「Sora」などを利用し、わずか数クリックで動画を制作。YouTubeやX(旧Twitter)、Instagramなどで広く共有されている。
動画の内容は、使いにくくなった新機能やアプリ内広告の増加、株価下落などを皮肉ったものが多い。なかにはアップデートを主導したカカオ社の製品責任者(CPO)を題材にしたディープフェイク映像も登場している。
韓国でAI風刺動画が広まるきっかけとなったのは、2024年のオンラインゲーム「メイプルストーリー」をめぐる騒動だ。当時、課金アイテムの確率操作疑惑などをめぐって批判が集中し、ユーザーたちはアップデートを担当したディレクターの顔や声をAIで再現した風刺動画を次々と投稿した。
一部の動画は再生数1500万回を超える人気を集め、「正常化」「全部やってあげた」「シン・チャンソプ」など数々のネットミームを生み出した。
攻撃的な内容の動画もあったが、ゲーム運営会社ネクソンとディレクター本人は批判を受け止め、改善策を発表。その結果、ユーザーからの評価が好転し、「かつての嘲笑が称賛へと変わった」と再評価されている。
しかし、こうした風刺文化の広がりとともに名誉毀損や肖像権侵害などの法的リスクも問題になっている。カカオ社のCPOは弁護士を通じて「『カトクポップ』動画の一部は情報通信網法上の名誉毀損や刑法上の侮辱罪、さらには個人情報・肖像権の侵害にあたる可能性がある」との見解を示した。
チョン・ジュンヒョク弁護士は「企業の幹部など社会的地位のある人物を風刺すること自体は、表現の自由の範囲内にあると考えられます。ただし、意図的に名誉を傷つけたり侮辱的な表現を用いた場合は、刑事罰の対象になり得ます」と指摘する。
さらに、風刺動画を収益化して配信している場合には、肖像の商業利用権(パブリシティ権)を侵害したとして民事上の損害賠償責任が生じる可能性もあるという。
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