
アジア各国が統合型リゾート(IR)を国家戦略として育成する中、韓国は依然として「賭博施設」との規制の枠に縛られており、アジア観光競争で後れを取っているとの指摘が出ている。
観光資源に乏しい都市国家シンガポールは、2004年に観光低迷と世界金融危機による成長鈍化への対策として、40年間タブー視されてきたカジノ規制を緩和。IRを「単なる賭博施設」ではなく「複合観光産業」として定義し、国家主導の大型プロジェクトとして導入した。
2010年開業の「マリーナベイ・サンズ(MBS)」は、単体でGDPの1%を創出。平均滞在日数は3.96日から4.81日へ延び、観光客数は2009年の970万人から2024年には1650万人へ急増した。観光収入も124億シンガポールドルから298億ドルへと倍増し、IRが都市全体の価値を引き上げる好例となった。
現在、アジアでは「IR戦争」が激化している。日本は2030年秋〜冬の開業を目指し、大阪・夢洲に総額約1兆2700億円規模の超大型IRを建設中だ。約2500室の高級ホテルやカジノ、MICE施設、エンタメ施設を併設し、年間約2000万人の来場と、約5200億円の年間収益を見込んでいる。
韓国から飛行機で90分圏内という地理的近さもあり、「大阪ショック」として観光・カジノ需要の大規模流出が懸念されている。日本・中国・東南アジアからのインバウンドだけでなく、韓国人のアウトバウンド需要まで吸収される可能性がある。
加えてアラブ首長国連邦(UAE)、フィリピン、タイも大型IRの建設に本格着手。シンガポールとマカオは既存施設に数兆ウォン単位で追加投資をし、「IR2.0」競争に突入している。
一方、韓国には仁川・永宗島や済州島に複合リゾートが存在するが、内国人のカジノ利用制限や一貫した法体系の不在、「ギャンブル=社会悪」とする認識などが障壁となり、産業としての拡大が妨げられている。
業界・学界はその限界を▽内国人カジノ出入り制限による投資回収の難しさ▽IR全体を統括する法的枠組みの欠如▽「賭博産業」のイメージによる民間投資の萎縮――の3点に集約する。
それでも韓国のIRには希望の兆しもある。仁川の「パラダイスシティ」は、ショー・アート展示・スパ・クラブなど非カジノ施設で集客力を強化し、13万人の雇用を創出した。非ギャンブル要素の価値向上による相乗効果が確認されている。
専門家らは、IRを観光・文化・テクノロジーが融合する高付加価値産業と再定義し、法制度を整備すべきだと強調する。シンガポールのように、IRを独立した産業分類とし、規制機関・社会還元体制を備えた「IR特別法(仮称)」の制定が必要とされている。
これは、単に内国人のカジノ出入りの是非を巡る「オープンカジノ」論争とは異なる視点だ。産業としての統合的規制体制、消費者保護、ESG基準などを包括的に設計する制度構築が急務だとされる。
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