韓国軍の未来を導く初級幹部の支援率が、深刻なレベルまで下がった。兵士については、ここ数年、服務期間が減る一方、給料は大幅に増加した。だが、幹部の処遇がそれほど変わっていない。軍の「科学技術強軍」育成目標も結局、幹部がいてこそ達成可能であるゆえ、政府と軍は優秀幹部の長期勤続を誘導できる対策作りに着手した。
「矛となる部隊の核心は初級幹部。彼らが戦闘型強軍育成をリードする役割を果たせるようにしなければならない」。軍当局はこの認識のもと、早ければ月内にも初級幹部の服務環境を改善する総合計画を発表する。
国防省は先月14日、イ・ジョンソプ(李鐘燮)国防相ら主要関係者と各軍別初級幹部ら60人余りが参加する「初級幹部懇談会」を開いた。イ・ジョンソプ氏は先月23日にも「初級幹部の服務環境改善セミナー」に参加し、軍政策専門家らの意見を聞いた。
◇民間就職時の優遇、いまはあまりなく
イ・ジョンソプ氏が初級幹部の服務環境の改善に積極的なのは、軍幹部を志望する青年が減るという状況が既に始まっているためだ。初級将校登竜門とも言える陸海空3士官学校、学士将校、学軍士官(ROTC=大学生の予備役将校養成訓練課程)の競争率が毎年下がっている。
3士官学校の入校競争率は2014年には7.3倍だったが、昨年は3.6倍に下がった。学士将校の競争率は2013年の6.2倍から昨年は2.6倍に急減、ROTCの競争率も2015年4.8倍から昨年、2.41倍と半減した。首都圏のROTCは定員の半分程度しか満たしていない。
士官学校も事情は変わらない。国防省の資料によると、陸軍士官学校を自主退学した学生は2019年17人から昨年63人に、4年間で3.7倍に増えた。特に昨年、退学生63人のうち半分の32人が1年生だった。1学年の定員が330人だが、約10%が1年足らずで学校を離れたのだ。同期間、空軍士官学校(定員236人)では退学生が11人から18人に、海軍士官学校(定員170人)は13人から24人に増えた。
ある現役尉官将校は「過去には将校出身なら民間企業就職時に優遇されるケースがあったというが、最近はそのようなこともあまりない」と語る。
◇各種手当て「現実的」改善必要
所得については兵長の場合、月給が2013年には10万ウォン(1ウォン=約0.1円)に過ぎなかったのが、今年は100万ウォンに上がり、2025年には200万ウォンを超える。一方で、今年の少尉1号俸月給は178万5300ウォンだ。手当ても含めれば兵士より多くの月給を受け取り、大差ない。今年1月に任官した下士(下士官最下級)1号俸の税引き後の平均月給も手当てを含めて230万ウォン程度だ。
イ・ジョンソプ氏は同月23日のセミナーで「兵服務期間短縮、報酬や手当てなどさまざまな理由により初級幹部の軍生活に対するビジョンと服務意志が弱まっている。特段の措置が急がれる」と懸念した。
国防省は▽短期服務奨励金や手当て増額▽下士号俸(給与の等級)昇給額と中(小)尉・下士成果賞与金基準号俸及び当直勤務費などの公務員水準増額▽老朽化した幹部宿舎リフォームや幹部宿舎の1人1室への転換――などを約束した。
ただし、こうした措置では、「軍のビジョン」を明確に提示し、初級幹部支援率下落を防ぐには不十分だ。出生率の持続的な減少で兵役の人的資源そのものの絶対的に不足している。
軍のある消息筋は「当直勤務手当て、前方地域勤務手当て、住宅手当てなどを公務員水準を超えるよう『現実的に』改善しなければ。お金をたくさん与えれば優秀な人材が多く集まる。だが、財政当局と調整する必要があり、容易ではないだろう」とみる。
軍関係者は「ひとまず平日1万ウォン、週末2万ウォンである当直勤務費を、それぞれ3万ウォン、6万ウォンに引き上げることになっている。初級幹部の本給が2025年に兵長より絶対に少なくならないよう財政当局と調整する。超過勤務手当ての場合、まず夜間手当ての増額から実行する」と述べた。
◇初級幹部養成の問題
国防省は、今はなき軍服務加点制度を新たな形で社会に定着させる案も考慮しているという。身体的な条件で軍に行けなかった人員や女性との公平性問題は依然として残るだろうが、軍歴を尊重するという点を示しながら服務関連の専門性を生かす分野があるという判断からだ。
これまで初級幹部養成の問題として指摘されてきた「大量獲得―短期活用―大量放出」の構造を断ち切り、「少数獲得―長期活用」の方向に進む時が来たとも指摘されている。初級幹部の義務服務期間を短縮して社会進出を援助しながら、軍に残る人材は確実に支援して専門性を高めてこそ「科学技術強軍」を育てることができるからだ。
政府関係者は「いくら最先端兵器体系があり、軍が自動化されても、結局、軍を動かすのは人間であり、立派な幹部がいなければ軍は滅びる。政府と軍はこう認識している。長期的には軍を、十分な補償・福祉により働き甲斐もある『良い職場』にするのが理想だ」と語っている。
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