
虚偽・操作情報の拡散に対し、韓国で警察が取り締まりを強化している。惨事を悪用した二次加害から、人工知能(AI)で制作した偽動画まで、オンライン上での虚偽情報が相次ぐ中、これまで適用例が多くなかった電気通信基本法第47条第2項を積極的に適用し、拘束捜査に踏み切るケースが増えている。
警察によると、判例が少なかった同条項が最近、虚偽情報流布事件に相次いで適用され、拘束や送検につながっている。警察庁は2025年10月、サイバー捜査審議官をチーム長とする「虚偽情報流布取り締まりタスクフォース」を発足。2026年1月2日からは、マクロなど組織的・電算的手法による虚偽情報犯罪の集中取り締まりも並行している。
これまでに110人を検挙し、199件を捜査中だ。虚偽・有害情報1074件については関係機関に削除や遮断を要請した。
警察庁の資料によると、2020~2025年に電気通信基本法違反で拘束された人数は年間0~3人にとどまっていた。しかし2026年1月には10件が立件され、このうち1人が拘束された。タスクフォースの運営期間(2025年10月14日~2026年1月23日)には同法違反で32件が立件されている。
第47条第2項は「自己または他人に利益を与える、あるいは他人に損害を与える目的で虚偽の通信をした者」を3年以下の懲役または3000万ウォン(約330万円)以下の罰金に処すると定める。2010年に憲法裁判所が第1項を違憲と判断して以降、第2項は「利益目的」の立証が難しいとして適用例が限られてきた。
しかし最近は、ユーチューブでの後援口座公開や広告収益構造などを通じて「利益目的」を具体化する捜査手法が活用され、適用が拡大している。
京畿北部警察庁は1月28日、AIで警察出動場面を偽造した動画を流布した30代ユーチューバーを同条違反容疑で拘束、送検した。動画は累積再生回数3400万回に達し、「録画中」表示や撮影時間情報を挿入して実際のボディカメラ映像のように制作。呼吸音や無線機ノイズもAIで再現していた。広告挿入による収益構造も確認されたという。
また、梨泰院雑踏事故の遺族に対し「麻薬テロ」などの虚偽投稿を362件繰り返し掲載し、後援口座を公開していた60代男性も同条違反で拘束、送検された。被告は初公判で容疑を否認している。
さらに、「韓国で下半身のない遺体が数十体発見された」との虚偽内容を拡散した登録者約95万人のユーチューバーも同条違反などで送検された。
一方で、虚偽情報そのものを直接処罰する刑事規定は依然として限定的だ。2010年の違憲決定後、後続立法が整備されておらず、法体系上の空白が指摘されている。
捜査上の制約もある。主要プラットフォームは「虚偽情報流布」という理由だけでは加入者情報を提供しない場合があり、名誉毀損など別の容疑を併用しなければ投稿者特定が難しいケースもあるという。
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