
一般の旅行者より数倍の消費力を持つ「富裕層観光客(ラグジュアリー観光客)」をどう呼び込むかに、韓国の観光業界が頭を抱えている。だが、日本や東南アジア諸国と比べても、韓国は高級インフラや独自のコンテンツが乏しく、高付加価値観光の受け入れに限界があるとの指摘が出ている。
韓国観光公社とヤノルザリサーチの統計によると、今年第1四半期の訪韓外国人観光客数は約387万人と2019年比で0.7%増加した。しかし、観光収入は23.8%、1人あたりの平均消費額は24.4%も減少した。免税店での高額商品(ブランド品・高級食品・化粧品など)の売り上げも、2019年の5兆6000億ウォンから2025年は2兆1000億ウォンへと半減している。
特に高い消費を生む富裕層観光客の減少が痛手となっている。かつてラグジュアリー客の主力だった湾岸協力理事会(GCC)諸国からの回復が遅れ、中国人観光客の消費も大きく落ち込んでいる。ヤノルザリサーチは「今年第1四半期の観光収支赤字は約4兆5500億ウォンと、2019年比で50%以上拡大した」とし、「韓国の観光収益創出力が低下している」と分析した。
その背景には、富裕層観光客が求める高級ホテルや差別化された観光体験が韓国には不足しているという構造的問題がある。韓国観光協会中央会によれば、全国にある5つ星ホテルは87軒と、全ホテル(896軒)の10%にすぎず、その半数以上がソウルと済州に集中。光州広域市や慶尚南道、全羅北道など6地域には5つ星ホテルが1軒も存在しない。
これに対して、日本は全国に高級宿泊施設がまんべんなく存在する。ホテルズドットコムによれば、日本国内の5つ星ホテルは236軒あり、東京(41軒)、札幌(21軒)、大阪(23軒)など主要都市でも容易に高級ホテルを利用できる。食事や温泉を備えた高級旅館を含めると、実質的なラグジュアリー施設の数はさらに多い。日本現地業界では約5万軒の旅館のうち約5%(500軒)が高級旅館に該当するとみている。
さらに、今年2月に実施された中国人観光客への調査では、ソウルの5つ星ホテルが東京の4つ星ホテルと同等の評価にとどまった。衛生面、サービス、施設の質などで日本に劣るという認識が強まっている。
決済、ナビゲーション、交通予約などのオンライン環境の不便さも韓国観光の障壁となっている。Googleマップやフードデリバリーアプリでは「海外カードが使えない」「外国人には使いづらい」との不満が相次ぐ。ある旅行会社の関係者は「外国人にとって利用しやすいアプリが韓国ではほとんど使えない」と語り、「富裕層観光において『印象』は極めて重要なだけに、これは明確な弱点だ」と指摘した。
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