韓国脳研究院は12日、初期認知症患者の神経細胞シナプスが損傷する原因を究明したと発表した。
アルツハイマー型認知症は、たんぱく質のアミロイドベータが細胞の外部に蓄積されて作られるアミロイドプラークのため、脳の神経細胞が死んで発病することが知られている。
しかし、アミロイドプラークが増える前に、初期認知症患者の神経細胞のシナプス(神経細胞と神経細胞の間のつなぎ目)が、先に損傷する原因はまだ明らかになっていない。
韓国脳研究院脳発達疾患グループのチェ・ヨンシク博士の研究チームは、アミロイドベータが認知症を引き起こす前段階において、記憶を保存する部位である海馬の神経細胞シナプスが、どのような分子メカニズムで損傷するかを研究した。
神経細胞には他の神経細胞に信号を伝達する長い軸索突起が伸びている。シナプスは、軸索突起が他の神経細胞と連結される部位のことで、シナプス損傷は軸索突起で発生する。主にエンドソーム~リソソーム経路が不具合を起こし、細胞の外に出すべき毒性タンパク質を除去できずに起きるとされる。
研究チームは、韓国の研究装備企業「Aligned Genetics」と共同開発した3次元脳透明化技術と、高度化されたシナプスタンパク体分析技術を活用した。
神経細胞から分泌されるべき小胞体が外に出られず、軸索突起の中にたまることでシナプス損傷が起きることを確認した。
また、一次繊毛(細胞に生えた「毛」のように見えるもの。細胞の外部信号を解釈する)に問題が生じた神経細胞が、他の神経細胞よりも過敏となり、早く損傷する事実を、単一細胞トランスクリプトーム解析技術などによって明らかにした。
これは単一細胞レベルでどの神経細胞がアルツハイマー型認知症に脆弱なのかを示している。
チェ・ヨンシク博士は「今回の研究は、認知症初期に脳神経細胞のシナプス損傷が先に起きるメカニズムを明らかにした点に意義がある。シナプス損傷を抑制する薬物を開発することで、より効果的な認知症治療ができるだろう」と話している。
今回の研究は「Abnormal accumulation of extracellular vesicles in hippocampal dystrophic axons and regulation by the primary cilia in Alzheimer’s disease」という題目の論文で、学術誌「神経病理学会報(Acta Neuropathologica Communications)」に掲載された。
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