
韓国の財界が、イ・ジェミョン(李在明)政権の対米交渉支援や青年雇用の拡大要請に積極的に応じてきたにもかかわらず、返ってくるのは規制の強化ばかりだとして失望感を募らせている。経済団体は「経営しやすい環境を整備する」との政府の公言にもかかわらず、立法・行政の両面で企業への規制が相次いで導入されていると批判する。
政府は、いわゆる「ノランボントゥ法」と呼ばれる労働組合法第2・3条の改正と商法改正に続き、法人税の引き上げを断行。さらに、労働災害撲滅を目的とした「労働安全総合対策」を発表し、重大災害を繰り返す企業に対し、営業利益の最大5%に相当する過料を科し、公共入札への参加を最大3年間制限するなど、経済的制裁を強化する方針を示した。
経済界はこうした規制の一方的な強化に危機感を強めており、台湾の事例と比較しつつ、企業環境を改善しなければ韓国経済がさらに悪化しかねないと警鐘を鳴らす。
企業各社は政府の求めに応じ、対米交渉を支援し青年雇用を拡大してきた。たとえば、サムスン電子のイ・ジェヨン(李在鎔)会長、SKグループのチェ・テウォン(崔泰源)会長、LGグループのク・グァンモ(具光謨)会長、ハンファグループのキム・ドングァン(金東官)副会長らは、8月25日に開かれた韓米首脳会談に経済使節団として同行し、政府の交渉を後方支援そた。米国のトランプ大統領が打ち出した関税圧力への対応として、現地での投資計画を発表し、相互関税を25%から15%へと引き下げる交渉に大きく貢献した。
また、イ・ジェミョン大統領が若年層の雇用難打開に協力を呼びかけた際には、サムスン、SK、現代自動車、LG、ハンファ、ポスコなどの主要企業が総計10万人以上の採用計画を明らかにした。
しかし、企業がこうした政府要請に応じる一方で、受け取るのは規制の強化ばかりだ。
商法改正、ノランボントゥ法の成立、硬直的な週52時間制と「週4.5日制」論争、法人税引き上げ、労災処罰強化などが相次ぎ、企業活動への負担は増している。政府は規制の根拠として「公平性」を挙げているが、こうした措置が国際基準と乖離しているとの指摘もある。
実際、急成長を遂げている台湾と韓国を比較すると、双方の企業環境には明確な違いがある。
台湾の2025年の1人当たりGDPは3万8066ドルで、韓国の3万7430ドルを22年ぶりに上回る見通し。経済成長率も台湾は4.45%と高水準を維持しており、2026年も2.81%と安定成長が続きそうだ。法人税率(韓国24%、台湾20%)や相続税最高税率(50%、10%)など、企業にとっての制度的負担の差が大きな要因とされる。
さらに、AI技術が牽引する半導体産業の成長にも企業環境が大きく関係しているとの分析もある。これにより、規制中心の政策から脱却しなければならないという声が経済界で強まっている。
韓国商工会議所のチェ・テウォン会長は、9月4日に開かれた企業成長フォーラムの基調演説で、「成長力を維持するには規制の壁を取り払わなければならない」と訴えた。
ある経済団体関係者は「誰の目から見ても、今の政府は事実上の“親労組政権”だ。経営側の懸念に応じた政策が何かあったか。最近、背任罪の緩和が議論されているが、それが他の強化された規制と等価交換になるとは言えない」と語った。
また別の関係者も「米中の企業は自国政府から全面的な支援を受けているが、韓国の企業は各種規制で身動きが取れないように見える。今は“銃声なき戦場”で企業が苦闘している時期であり、政府が全面支援をすべき“ゴールデンタイム”だ」と指摘した。【news1 ウォン・テソン記者】
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