2025 年 3月 1日 (土)
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韓国経済、風前の灯なのに…原発追加費用1.4兆ウォンに揺らぐ「チーム・コリア」 [韓国記者コラム]

2023年10月19日、国会の産業通商資源中小ベンチャー企業委員会に出席した(右)キム・ドンチョル韓電社長とファン・ジュホ韓水原社長(c)news1

韓国国内では長引く景気低迷で内需が冷え込んでいる。しかし、こうした厳しい経済状況の中でも、韓国の輸出産業において新たな成長の柱となりつつあるのが「K-原発」だ。初の欧州進出の可能性が高まったことは、世界における韓国の底力を示す成果といえる。

韓国の「チームコリア(Team Korea)」は昨年7月、総事業費24兆ウォン(約2兆7000億円)規模のチェコ新規原発建設事業で優先交渉権を獲得した。これは、世界最高レベルの原発企業と評価される米ウェスチングハウスや、フランス電力公社(EDF)を抑えて得た快挙だった。

本契約締結まで残り数週間。長らく足かせとなっていたウェスチングハウスとの知的財産権をめぐる紛争も決着がつき、本契約は順調に進むとの見方が強い。

こうした成功の背景には「一つの力」があった。韓国水力原子力(韓水原)を中心に、韓国電力技術、韓国原子力燃料、韓電KPS、斗山エナビリティ、大宇建設などが結束し、「ワンチーム」として受注競争に挑んできた。

「チームコリア」を構成する各企業は、チェコ現地で文化交流やボランティア活動、事業投資などを展開し、受注獲得に向けて尽力してきた。

しかし、この「チームコリア」に亀裂が生じている。

中心的な役割を担う韓国電力(韓電)と韓水原が対立しているためだ。

発端は1兆4000億ウォン(約1600億円)規模の工事費負担をめぐる問題だ。韓電が代表として2009年に受注したアラブ首長国連邦(UAE)・バラカ原発は昨年、4号機の商業運転開始をもってプロジェクトが完了した。

しかし、工事費の精算を進める中で、当初の見積もりを超える追加費用が発生したことが問題となった。バラカ原発の建設中に設計変更や追加工事が発生し、総額1兆4000億ウォンの追加費用が生じた。この負担をめぐり、韓電と韓水原が対立しているのだ。

韓水原は韓電に対し追加費用の精算を求める。韓電は「UAE側と協議し、『チームコリア』全体で精算を受けるべきだ」と主張する。双方の意見が食い違っているのだ。

最近、韓電のキム・ドンチョル社長と韓水原のファン・ジュホ社長が解決に向けて会談したものの、溝は埋まらずに終わったという。

最終的に、双方はロンドン国際仲裁裁判所(LCIA)に判断を委ねることになる。これは、韓国国内の内輪揉めを、国際社会に晒すことを意味する。

今回の引き金となったのは追加工事費問題だが、業界では韓電と韓水原が「原発輸出の主導権」をめぐって以前から対立していたとの見方も根強い。

韓水原は韓電が100%の株式を保有する子会社であり、2001年4月に韓国政府の電力産業構造改革方針に基づいて分離された。

原発のガバナンス上、韓水原が原発の建設・運営・事業を総括しているが、支配構造の面では依然として韓電が原発事業の中心となっている。このため、主導権をめぐる対立は避けられない状況だった。

バラカ原発の受注当時も、韓電が代表として契約を獲得したものの、実際の輸出業務を担ったのは韓水原であり、韓水原側には不満がくすぶっていた。

業界では「起こるべくして起こった問題」との見方が強い。これを機会に両者の対立を根本的に解消する必要があり、そのためにも原発輸出を専門に扱う機関を新設して体系を一本化すべきとの声が上がっている。

今回の対立の矛先は、産業・通商分野の主管官庁である産業通商資源省にも向けられている。現在の国際的な通商危機を乗り越えるには、政府が全力を尽くす必要があるにもかかわらず、「傍観者的態度を取り続けている」との批判が出ている。

同省は今回の韓電と韓水原の協議を仲裁するとしていたが、結果的に国際仲裁へと発展する見通しとなった。主管官庁が傘下の公企業すら適切に管理できず、国際的な紛争に発展させた責任は免れないだろう。

韓国は今、危機の渦中にある。大統領弾劾という異常事態に直面し、トランプ政権による通商圧力は日に日に強まっている。

かつて、アジア通貨危機の際、国民が家の引き出しから金(ゴールド)を持ち寄り、経済危機を乗り越えた「連帯の精神」が必要とされている。

いまこそ、再び「チームコリア」の底力を示す時だ。

(c)news1

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