
「給食室は圧縮された高強度の労働現場です。調理中の煙が充満している中で、重い食材を複数人で持ち上げなければならない作業が頻繁にあります。環境そのものを変えられないのであれば、働き方を変える必要があると考えました」
大量調理ロボットを手掛ける「韓国ロボティクス」のウ・ジョンヨン代表は、給食ロボット開発の趣旨・目的についてこう語った。
韓国ロボティクスは2020年に設立された給食ロボット企業。2023年には韓国で初めてソウルの崧谷中学にロボット4台を納入、現在までに国内の学校や機関に計15台のロボットを導入している。
2024年は導入のペースがやや鈍化したものの、2025年初めから本格的な拡大に乗り出した。今年上半期だけでソウルの6校、仁川の3校にロボットを設置した。下半期には大企業の事業所などへの追加導入も予定されている。

◇「大鍋料理」から自動化
給食室は高強度の労働や環境的な要因から、自動化が不可欠な現場の一つだ。ただ、取り扱う料理の種類が多く、工程も複雑なため、新しい機器の導入が難しい場所でもあった。
ウ・ジョンヨン代表は給食室を訪れて現場の声を聞き始めた。
そこで最も頻繁に使用されている調理器具に注目した。年間に扱われる約400種類の料理のうち、半分にあたる200種類が大鍋で作られる料理だった。
こうして大鍋料理を支援するロボットの開発を思いついた。
給食室ではほとんどの料理が大鍋で作られる。特に高い筋力が求められる炒め料理や、調理時に煙が多く発生する揚げ物、スープ・煮込み料理を補助できる機器の開発を目指した。こうしてソリューションは徐々に具体化していった。
ロボットは1カ所に固定され、重い食材の移動や鍋の中での攪拌作業を代行する。作業者が熱い食材や油の前に立っている時間を減らし、食材の下ごしらえや味付けなど他の作業に集中できるようにする。
韓国ロボティクスの分析によると、炒め作業では平均1200回、揚げ物では700回の筋力が投入されているが、ロボットによってそのうち約77%の労働が削減されているという。

◇「ロボットおじさん」から給食室の「現場の問題解決者」へ
ただ、このソリューションを構築するのは簡単ではなかった。現在もロボットや周辺設備の改善に向けた検討が続いている。
韓国ロボティクスは、斗山ロボティクスのH2017協働ロボットと周辺のIH設備などを基盤に、現場に合わせたカスタム設計を支援している。これらを適切に制御し、現場で使いやすくするための利便性向上の研究が必要だった。
特に現場理解が重要だった。ウ・ジョンヨン代表は「給食室であんなに水を撒くとは思わなかった」と振り返り、「ロボットはもちろん、IH調理器から周辺設備や床材に至るまで気を配らなければならなかった」と語った。
当初は調理作業をロボットで自動化するという目標だった。だが、ウ・ジョンヨン代表は、いつの間にか給食室現場の悩みを聞く問題解決者になっていた。
ロボット導入に伴い、専用の揚げ網から調理用のへらに至るまで、現場のニーズに合わせて一つ一つ新たに作成していった。
ウ・ジョンヨン代表は次のように強調する。
「作業者の方々がもともと使っていた環境にロボットが自然に溶け込む形で開発している。“ロボットが導入されたからシステム全体を変えなければならない”と言えば、私たちは楽かもしれない。だが、それではうまくいかない」

◇解決すべき作業は「山積み」
依然として課題は多い。給食室の現場からの反応は肯定的だが、さらに改善できる作業が無数に残っている。現場からは「ロボットの力をもっと強くしてほしい」「ロボットが動きながら複数の作業ができるようにしてほしい」といった要望が伝わる。
空間の問題もある。そもそも給食室はロボット導入を想定せずに設計されているため、たいていの場合、面積が狭い。作業者が鍋と鍋の間をかろうじて通れるほどだ。ロボットを複数台導入したくても、スペース不足のため断念するケースも多い。
韓国ロボティクスは、既存の空間配置を最適化しつつ、ロボット導入による負担を軽減する方法をともに模索している。現場でロボットがより効果的に使えるよう設計と高度化を進めながら、その有用性を検証している。
調理以外にも、食器洗い作業が非常に大変だという意見も多く寄せられている。すぐにロボットで解決するのは難しいが、韓国ロボティクスは現場のニーズにぴったり合ったソリューションを今後も継続して模索していく。
「ロボットが厄介者ではなく、本当に作業者を助ける道具として活用できるようにしたい。現場で必要とされる分野があればモデルを拡張し、徐々にラインナップを増やしていけば、いつか非常に役立つ製品が生まれるはず。複数のロボットを統合的に管理して、給食運営全体のシステムをひとつに自動化する方法も実現できると考えている」
ウ・ジョンヨン代表はこう展望した。
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