
韓国宇宙産業において、民間が主体となる発射体の時代が本格的に幕を開けようとしている。スタートアップ「イノスペース」と、大手「ハンファエアロスペース」が、それぞれ11月中に宇宙ロケットを打ち上げ、商業化と技術自立をかけた試験台に立つ。
イノスペースは11月23日午前3時(韓国時間)、ブラジルのアルカンタラ宇宙センター(Alcântara Space Center)から小型ロケット「HANBIT-Nano」を打ち上げる。同社にとって初の商業打ち上げであり、ブラジル宇宙庁やインドの宇宙企業「グラハ・スペース(Grahaa SPACE)」など顧客の小型衛星5基と実験用搭載物3基を軌道へ送り出す。
HANBIT-Nanoは全長21.8m・直径1.4mの2段式小型ロケットで、500km上空の太陽同期軌道(SSO)へ最大90kgのペイロードを輸送可能。1段目には推力25トンのハイブリッドエンジン、2段目には推力3トンの液体メタンエンジンを搭載している。1段エンジンは2023年に同地で実験機を用いて試験済みだ。
今回の発射は18kgという軽量ペイロードながら、契約に基づく商業発射という点で重要な節目とされている。ブラジル側との連携による安全管理や運用手順も確立されており、天候や現地事情による遅延の可能性はあるものの、準備は最終段階に入っているという。
一方、同じく11月27日に予定されている「ヌリ号」第4次発射は、国家宇宙開発計画の一環だ。注目すべきはその製造・統合・運用をハンファエアロスペースが初めて全面的に担った点にある。
ヌリ号は、2022年にスタートした「韓国型発射体高度化事業」の一環で、2027年までに計6回の繰り返し打ち上げを通じて発射体の信頼性を高めることが目的。これまで政府出資機関である韓国航空宇宙研究院(KARI)が中心だったが、今回からはハンファが技術移転を受けて設計から運用まで全工程を主導している。
第4次発射では、ペイロードが約1トンと前回の2倍に増えた上、韓国初の深夜発射という点で技術的なハードルも高い。成功すれば、ハンファがヌリ号の運用能力を完全に自社で確立したことを証明する機会となる。発射運用のための人員強化や技術検証も進めている。
ヌリ号は6回の発射が完了すれば、R&D段階を終え商業サービスレベルへと移行する。ただ、米スペースXの「ファルコン9」と比べて打ち上げコストが10倍程度高く、商業化には大きな課題が残る。
業界では、衛星搭載容量を増やすためのフェアリング(保護カバー)の拡張、設計最適化と軽量化、傾斜軌道(軍事衛星向け)への対応実績の蓄積が必要だと指摘しており、宇宙航空庁は2028年の第7次発射実施に向けて予算当局と協議中だ。
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