2024 年 12月 21日 (土)
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韓国有力ソフト企業、成長の秘けつは「読書討論会」 (上)

11月30日、ソウルの永林院ソフトラボで「ヤングウェイ協議体」に参加するクォン・ヨンボム代表と職員ら(写真=同社提供)(c)NEWSIS

韓国に「永林院(ヨンリムウォン)ソフトラボ」という中堅ソフトウェア企業がある。会計・財務などをまとめて管理する統合基幹業務システム(ERP)の有力ベンダー(製造・販売供給元)だ。ここでは、業務が山積する平日午後の時間を使って、研究開発会議や営業会議ではなく、なんと「読書討論会」が開かれている――。

◇平日の午後開催「読書討論会」

11月30日午後、ソウル市江西区の永林院ソフトラボ本社の大会議室。さまざまな部署、年齢層の職員約20人が熱く討論した。内容を聞いてみると、同じ本を読み、それぞれ感想を発表し、自由に討論している。読書討論会だ。だが、その内容が普通ではない。

「自身の人生において、お金の価値と重要性をどう考えますか?」

「社会環境とは関係なく、人生をどう生きるべきだと思いますか?」

こんな質問に対する討論が繰り返される。

「永林院で22年間勤め、さまざまな業務に携わるなかで倦怠感を覚えることがありました。好奇心からクラウドによる新たなビジネスを志願し、多くの顧客に会いました。人生におけるさまざまな倦怠感を“好奇心”という言葉からアプローチすれば、新しいものを見つけられると思います」

「社会人になったばかりのころ、給与がでませんでした。仕方なくクレジットカードを使ったのですが、その決済ができず、ブラックリストに載ったことがあります。カード会社から督促の電話が来るたび、震え上がり、逃げ回るということを繰り返しました。お金のせいで尊厳が損なわれた、と感じました」

哲学的な観点から人生の意味を考える――という観点だ。

◇MZ世代からシニアまで

この読書討論会は「ヤングウェイ協議体」と名付けられている。

「永林院ソフトラボ」創業者のクォン・ヨンボム(權寧凡)代表が自ら主導する、同社固有の組織文化だ。

職員約350人が20人ずつのグループに分かれ、毎週水曜日にクォン代表とともに読書討論に臨む。

1時間目、各自が作成した読書感想文を発表する。

2時間目、「発展の哲学」と「尊厳文化」の観点で討論する。

所要時間は合わせて4時間だ。1つのグループに、MZ世代から60代のシニアまで、まんべんなく割り振られている。

特に、社員と、外部からの派遣社員が交流できるようグループが編成されている。同社には現在、職員約350人のうち約150人が派遣社員だ。

◇ワインを飲みながら自由ディスカッション

この日の討論会の指定図書は、韓国の小説家、パク・ワンソ(朴婉緒、1931~2011)の「恥ずかしさを教えます」(1974)だった。討論会の題材としては、やや難易度の高い内容だ。職員らが退屈するのではないか、と思ったのもつかの間、真剣で情熱的な空気が漂った。

「倦怠感」について語ったのは、クラウド事業部に所属する50代の男性社員だった。語りながら、泣き出しそうになった。「年を取るとね、涙もろくなるのですよ」。こんな職員の冗談に、場がなごんだ。

参加者みなが、自分の意見を持ち、それを自信を持って述べる。職責に関係なく、私的に、虚心坦懐に、本音を打ち明けた。

本来、会社代表との討論は、職員にとって気まずいものだ。だが、クォン代表は、自身の意見を述べるのではなく、討論の進行を受け持っている。職員の話に耳を傾け、時にはユーモアも交えて、雰囲気づくりに努めている。

討論だけで終わるのではない。

職員は社内食堂に移動し、今度は四つのグループに分かれ、ワインを飲みながら自由に話し合う。クォン代表は各テーブルを回り、職員と直接、コミュニケーションを取り、フィードバックをする。

(c)NEWSIS

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