
違法撮影物・性搾取物の流通に対し、韓国政府が制裁を求めた900以上のウェブサイトについて、5カ月間にわたり一切の是正措置が取られていなかったことが明らかになった。背景には、2025年6月に発足した新しい審議機関「放送メディア通信審議委員会(放審委)」で、委員長や委員の構成が遅れており、審議会自体が一度も開かれていないという現状がある。
デジタル性犯罪の被害が拡大する中、こうした審議の遅れは対応の遅滞を招いており、被害支援機関への権限付与など、迅速な対応が求められている。
性平等家族省は2025年6~10月の間に929件の違法撮影物関連サイトに対する是正を放審委に要請したが、実際に是正措置が決定された件数は「0件」だった。これは、同委員会が委員未選任により、6月以降、審議・議決する会議が一度も開催されていないためだ。
放審委は、情報通信網法に基づいて、アクセス遮断・映像削除・サイト閉鎖といった制裁を決定する権限を持つ。法律的な強制力を伴うため、違法サイト対策の中心的な役割を担っている。
一方、デジタル性犯罪に対応する主管官庁である性平等家族省は現行制度上、違法サイト運営者に対して「削除要請」はできるが「制裁権限」は持たない。特に海外事業者に対しては要請が無視されるケースが多く、国内ユーザーのアクセスを遮断する放審委の是正決定が、事実上の最終的な対応手段となっている。
国会性平等家族委員会に所属する共に民主党のキム・ハンギュ議員室によれば、過去の是正要請件数は2022年に6443件、2023年に1556件、2024年には1092件と減少傾向にあるものの、実効性のある措置が追いついていないのが現状だ。
旧・放送通信審議委員会は2025年10月、「放送メディア通信委員会設置および運営に関する法律」の施行に伴い解体され、新たに放審委が設立された。しかし、法施行から1カ月が過ぎても委員9人(うち6人は国会推薦、残りは大統領任命)が未だ構成されず、業務が停滞している。
放審委関係者は「6月以降、会議による措置は取れていないのが事実だ」と認めた上で、「特定投稿については自主規制の要請を通じて削除が実現する場合もある」と述べた。
問題は、AIツールや新興プラットフォームを悪用したデジタル性犯罪が急増しているという点だ。法的対応が遅れれば、違法撮影物の複製・拡散・消費という悪循環を止められなくなる。
性平等家族省傘下の「中央デジタル性犯罪被害者支援センター」によれば、2024年の合成・編集による被害報告件数は1384件で、前年(423件)の3倍以上。違法撮影被害も4182件と、前年(2927件)比で約43%増加している。
現場では、被害支援機関により強い法的権限を与えるべきだとの声が出ている。一部の違法サイトからは、ディソンセンターが削除を要請しても「お前らに何の法的権限があるのか」と開き直る返答が返ってくるケースもあるという。
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