
韓国政府が今月に入り、国家情報院が担当してきた対北朝鮮向けのラジオ・テレビ放送を全面的に中止していたことが7月21日、確認された。政府の交代ごとに放送内容や強度が調整されることはあったが、放送自体が完全に中断されたのは今回が初めてとなる。
北朝鮮関連の消息筋によれば、中断されたのは国家情報院が関与していた対北朝鮮ラジオチャンネル「人民の声」「希望のこだま」「自由FM」「Kニュース」「自由コリア放送」など。
民間で対北朝鮮ラジオ放送を手掛ける「国民統一放送」のイ・グァンベク代表は「政府系の複数の対北放送チャンネルが今月に入りほぼすべて中断されたことを、放送監視をしている関係者から確認した」と語った。
これに加え、国家情報院が運営していた対北テレビ放送も同様に中止された。
今回の措置は、イ・ジョンソク(李鍾奭)国家情報院長の建議によって実施されたものとされる。これらの対北放送は、北朝鮮国内に外部の情報を伝える役割を果たしてきたが、北朝鮮当局はこれを厳しく取り締まってきた背景があり、今回の放送中断は北朝鮮への融和的な措置と見なされている。
すでにイ・ジェミョン(李在明)政権は、発足直後から対北ビラ散布の統制、拡声器による対北放送の中止など、南北の緊張緩和を図る措置を講じてきた。さらに、海上で漂流して保護されていた北朝鮮住民を非対面方式で北朝鮮へ送還するなど、融和ジェスチャーを続けている。
今回、国家機関による対北放送が全面的に中断された点において、北朝鮮側からすれば、ビラ散布統制に匹敵する重大な緊張緩和の意思表示と受け取られる可能性が高い。
国家情報院は、対北放送の存在および中断の事実については確認できないとの立場を示している。対北放送は、表向きは「海外同胞総連合」や「朝鮮労働者総連盟」などの名称で運営されていたが、実際には情報機関の心理戦の一環として非公式に進められてきたとされる。
一方、民間団体による対北放送は引き続き継続されている。ある民間放送関係者は「我々は現在も放送を送信しており、今後も継続する」と語っている。
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