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韓国のユン・ソンニョル(尹錫悦)大統領の弾劾審判における最終弁論が目前に迫り、憲法裁判所での歴史的な局面に注目が集まっている。昨年12月14日に国会が弾劾訴追案を可決してから73日後の最終弁論で、現職大統領が憲法裁判所で直接最終意見陳述に臨むのは韓国憲政史上初めてとなる。
弾劾審判の争点は、昨年12月3日に発令された非常戒厳令の適法性と、その発令に伴う国会封鎖や政治家・法曹関係者の逮捕指示など、憲法違反・法律違反の有無だ。国会側とユン大統領側は、最終弁論でも2時間ずつの持ち時間で激しい法理論争を展開するとみられる。
最終弁論は25日午後2時から始まり、当日の弁論で審理を終える予定だ。
国会側は、非常戒厳令が憲法で定められた要件や手続きを順守しておらず、違憲・違法であると主張。また、戒厳令の発令により国会や中央選挙管理委員会などの機能停止を図ったことや、その重大性からユン大統領の罷免を求めている。国会側は、最終弁論のための「最終準備書面」を24日午後に完成させる予定で、キム・イス、ソン・ドゥファン、イ・グァンボム各弁護士が戒厳令の違憲性を強調する方針だ。
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一方、ユン大統領側は週末を通じてソウル拘置所に収監中のユン大統領と面会し、最終弁論の戦略を練った。ユン大統領側は、非常戒厳令の発令は大統領の固有権限であり、当時の国家危機的状況に鑑みて適法であったと主張する。さらに、この戒厳令は短時間で終了し、実質的な被害を伴わない「警告的かつ平和的」な措置だったことから、弾劾訴追の棄却を求める見込みだ。また、弁論の過程で提出した「反国家勢力」や「ハイブリッド戦争」に関連する証拠資料も、戒厳令発令の正当性を補強するための要素とみられている。
憲法裁判所は、最終弁論で両当事者に時間制限のない最終意見陳述の機会を与える方針で、ユン大統領は出廷して40分程度、陳述すると予想されている。過去の大統領に対する弾劾審判ではノ・ムヒョン(盧武鉉)氏やパク・クネ(朴槿恵)氏は出廷せず、代理人が陳述を代読した。今回は現職大統領自らが発言する異例の展開となる。
ユン大統領は、戒厳令発令の不可避性と適法性、また不正選挙疑惑の確認を目的とした行動であったことを改めて強調するとともに、政権運営の今後の方針についても言及する可能性がある。さらに、戒厳令発令による社会的混乱を招いたことへの遺憾の意を表明する案も検討中とされている。
国会側の訴追委員として最終意見陳述をする予定のチョン・チョンレ法制司法委員長の発言にも注目が集まる。パク・クネ氏の弾劾審判時、訴追委員として最終陳述をしたクォン・ソンドン議員は感極まり、声を詰まらせたことが記憶に新しい。
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最終弁論の所要時間も関心事だ。2004年のノ・ムヒョン氏の弾劾審判では、最終弁論に3時間12分を要し、2017年のパク・クネ氏の際には6時間17分に及んだ。今回は両陣営が2時間ずつの総括弁論を進めるが、ユン大統領自身の最終陳述も含まれるため、長丁場となる可能性がある。
最終弁論当日は、憲法裁判所周辺での警備も大幅に強化される見込みだ。特にユン大統領支持者によるデモ活動が連日展開されており、警察は裁判所付近の交通規制や出入り口の身分証確認を徹底。さらに、憲法裁判官らへの身辺警護も強化されるとみられる。
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