2026 年 1月 22日 (木)
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韓国式入浴文化、観光ブームの陰で「消えゆく“町の銭湯”」

ソウル市江北区の大衆浴場「ウヨン湯」のカウンター(c)MONEYTODAY

「最近の若い人は全く来ないよ。あと5年もすれば全部なくなるんじゃないかな」。ソウル市江北区の大衆浴場「ウヨン湯」を営むソン・ヨングさん(68)はこう語った。訪れるのは60代以上の常連客ばかり。受付カウンターには「80歳以上または体の不自由な方は保護者と一緒にご入場ください」との案内文が貼られていた。浴場入り口にはバラエティ番組の撮影で訪れた芸能人たちの写真も飾られているが、テレビ放送後も客足は増えなかったという。

韓国式入浴文化はKカルチャー人気を追い風に、外国人観光客の間で注目を集めている。しかしその裏で、地域密着型の「町の銭湯」は次々と姿を消しつつある。

韓国統計庁によれば、2024年時点で全国の浴場業者数は5737軒。20年前の2004年には9845軒にのぼっていたが、半数近くまで減少した。

韓国式入浴施設は、英オックスフォード英語辞典に「チムジルバン」として収録されるなど、世界的な認知も進んでいる。Netflixのアニメ「KPOPガールズ! デーモン・ハンターズ」にも登場し、観光資源としての価値が高まりつつある。

実際、外国人観光客をターゲットにしたスパや体験型の入浴施設も増加している。だが、これは従来の庶民向け大衆浴場とは性質が異なる。最近1年間にソウル市内で新たに営業許可を取得した26軒の浴場のうち、23軒が高級スパやフィットネスクラブなどだった。

韓国浴場業中央会のキム・スチョル事務総長は「外国人観光客が訪れるのは、あくまで高級スパやチムジルバンといった観光目的の施設。地域の銭湯とは完全に別業種に近い」と話す。

実際に、町の銭湯の客数は激減している。ウヨン湯も一日平均の来客数は約30人にとどまる。しかも、光熱費などの固定費が経営を圧迫する。ウヨン湯では月々のガス代が約300万ウォン(約32万4300円)、電気代が約150万ウォン(約16万2150円)、水道代が約100万ウォン(約10万8100円)と、合計550万ウォン(約59万4550円)近い固定支出が発生する。ここに人件費が加わるため、実際の負担はさらに大きい。

このような現状から、一部では町の銭湯を福祉インフラとして維持・支援すべきだとの声も上がっている。

翰林大学社会福祉学科のソク・ジェウン教授は「大衆浴場は韓国独自の高齢者福祉インフラであり、特に冬場の弱者にとっては欠かせない存在。日本では介護サービスの一環として入浴が必須となっている。公共機関が直営する場合、施設管理の問題や、浴場が“階層分離”の象徴になってしまう懸念がある。むしろ民間事業者への支援を通じた持続可能な運営の方が現実的だ」と指摘する。

(c)MONEYTODAY

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