韓国のコメディアンで女優のイ・ギョンシル(57)が「通信媒体を利用したわいせつ行為」の疑いで告発された。俳優イ・ジェフン(39、男性)に向けたラジオでの不適切な発言のためだ。だが、イ・ジェフンの態度や所感が伝えられていないことから、第3者が告発したことが適切だったかについて多様な意見が出ている。
ソウル警察庁は19日、イ・ギョンシルに対する告発状を受け付けた。告発人は延世(ヨンセ)大学に在学中の学生だという。
イ・ギョンシルは17日のSBSラジオ「2時脱出カルトゥーショー」で、イ・ジェフンが上着を脱いだ場面に言及し「胸と胸の間に谷間があるのが見える。谷間に水を流して、下から飲もうじゃないか。それはまさに薬水だ」などと発言した。この発言は既に削除され、視聴できなくなっている。
性暴力犯罪の処罰などに関する特例法(性暴力処罰法)上の「通信媒体を利用したわいせつ行為」は1994年制定当時、親告罪だった。親告罪とは被害者の告訴がなければ起訴できない犯罪をいう。しかし2013年、すべての性犯罪に対して親告罪規定が廃止され、誰でも告訴・告発できるようになった。
親告罪規定廃止の背景にあったのは、被害者保護を求める声の高まりだ。性的暴行を受けても被害者の負担が重くて告訴できない場合が多く、告訴しないよう加害者が圧迫したり、合意を促すなどの2次被害も頻繁に発生した。
◇どうする被害者の意向
一方で、第三者による告発がかえって被害者保護に反するのではないかという意見もある。当事者のイ・ジェフンがイ・ギョンシルの発言をどのように受け止めているのか確認されていない。軽微な性暴力事件では、事件が大きく広がらないことを望む被害者もおり、今回のケースもそれに該当する可能性がある。
実際、性暴力被害者が第三者の告発に不快感を示した事例がある。2021年1月当時、正義党のキム・ジョンチョル代表からセクハラ被害に遭った同党のチャン・ヘウォン議員の事件だ。キム・ジョンチョル氏がセクハラの事実を認め、正義党はキム氏の代表職を解いた。その後、市民団体がキム・ジョンチョル氏をセクハラ疑惑で告発した。
これに対し、チャン議員が「私とのいかなる意思疎通もなしに、一方的に私の意思を無視したまま加害者に対する刑事告発をしたことに大きな遺憾を表わす」と明らかにした。ソウル警察庁は同年4月、事件不送致で捜査を終結した。
ただ、被害者の意思に反していても、性犯罪には厳重な対処が必要だという反論もある。韓国刑事・法務政策研究院のチャン・ダヘ研究委員は「刑法はどんな行為が私たちの社会にあってはならないのか規定している。その発言が罪なのか否かを評価しなければならず、被害者の意思について処罰可否を判断することはできない」と話している。
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