韓国大統領警護処がユン・ソンニョル(尹錫悦)大統領の逮捕状執行を阻止した件を受け、警護処の存続をめぐる議論が再燃している。野党は、警護処が「大統領の私兵組織に堕落した」と批判し、解体して警察に業務を移管するべきだと主張している。
野党「祖国革新党」は6日、警護処の廃止を盛り込んだ政府組織法および大統領警護法改正案を提出する方針を明らかにした。また、最大野党「共に民主党」のパク・チャンデ院内代表も、逮捕状執行が失敗した4日、大統領直属機関である警護処を解体し、業務を他機関へ移管すべきと主張した。
警護処の存続に関する議論はこれが初めてではない。同組織は1963年、パク・チョンヒ(朴正煕)大統領(当時)の下で「大統領警護室」として創設された。その後、軍事政権時代には強大な権限を持つ存在だったが、1987年の民主化以降、「独裁の遺物」として政権交代のたびに廃止論が浮上してきた。
過去には、イ・ミョンバク(李明博)政権時代に「小さな政府」を目指す動きの中、大統領室の一部に編入され、「大統領警護処」として格下げされた。パク・クネ(朴槿恵)政権では再び格上げされ、閣僚級機関として復活したが、ムン・ジェイン(文在寅)政権では再度、「警護処」に格下げされた。この間、組織の役割や権限が大きく揺れ動いてきた。
今回の議論の発端は、3日に高位公職者犯罪捜査処(公捜処)と警察が大統領官邸に突入し、ユン大統領の逮捕状執行を試みるなか、警護処が200人以上の職員を動員してこれを阻止したことだ。
警護処を警察に統合することを主張する専門家もいる。一部では、米国や英国、ドイツなどの主要国で、国家元首の警護が独立機関ではなく、警察や政府省庁の下で置かれる例を挙げている。例えば、米国では「シークレットサービス」が国土安全保障省の傘下組織となっており、英国やドイツでは警察が元首警護を担っている。
一方で、警護業務には一切のミスが許されない特性があり、61年間にわたり専門性を蓄積してきた警護処の役割を軽視すべきではないという声も根強い。
また、韓国の特殊な安全保障状況を考慮すると、外国の事例と単純に比較することは難しいとの意見もある。警護処側も「緊急時において軍と有機的な連携が可能な大統領直属機関であることが必要だ」と反論している。
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