韓国で「人工知能(AI)の発展と信頼基盤の構築に関する基本法(AI基本法)」が26日に国会本会議を通過し、韓国のAI産業全般における初の制度的枠組みが整備されることになった。業界はおおむね歓迎の意を表しているが、法の適用範囲や速度、具体的な支援・規制手段については多様な意見が交わされている。
AI基本法が通過したことで、韓国は欧州連合(EU)に次いで世界で2番目にAI産業全般を包括する基本法を制定した国となった。この法の制定により、AI産業を活性化するとともに、倫理・安全問題への対応システムを構築することが期待されている。
この法律では、韓国科学技術情報通信省が定期的に「AI基本計画」を策定し、大統領直属の国家AI委員会をコントロールタワーとして産業育成と倫理的基準を調整する役割を担う。また、人命や安全、基本権に重大な影響を与える可能性がある「高影響AI」を別途分類し、政府が対象と範囲を定める条項も含まれている。
ある業界関係者は「AI産業に関する明確な基準と支援策を盛り込んだ法律ができたことで、不確実性がある程度解消されるだろう」と述べ、政府が業界の課題を整理し方向性を示すこと自体が大きな助けになると評価した。
これまでAI業界では、法的な空白が原因で混乱が少なくなかった。生成型AIやビッグデータを基盤とするサービスを準備する企業は、どのような規制や支援が適用されるのかを明確に把握することが難しく、投資家も法的リスクを懸念して資金の投入をちゅうちょしていた。
あるIT業界関係者は「AI技術を活用した多様なビジネスが展開されているにもかかわらず、関連する法や制度がないため、歯がゆい状況だった」とし、AI基本法が不確実性を解消し、企業が研究とビジネスに集中できる環境を作ることを期待すると述べた。
◇「規制の色が濃い印象」
韓国社会もAI基本法の制定を概ね歓迎している。産業と技術の振興だけでなく、倫理と安全への対応という重要な課題を同時に取り上げた点が評価されている。
国際AI倫理協会(IAAE)のチョン・チャンベ理事長は「今回の法制定により、韓国はグローバルAIイニシアチブをリードするための基盤を整えた。来年以降、産学官や民間のすべての主体が協力して韓国AIがグローバルトップティアに到達するための原点とすべきだ」と述べた。
一方で、法制定の速度や適用範囲に関する懸念も存在する。特にAI基本法が産業振興と倫理・安全の両側面を包括しているため、これらのバランスが適切かどうかについて批判的な意見が出ている。
情報世界政治学会(KAWPI)会長を務めるソウル大のキム・サンベ政治外交学部教授は「法の制定自体は良いシグナルだが、全体的に規制の色が濃い印象を受ける」と指摘。「欧州の事例を多く参考にしているようだが、米国のように規制を緩和して技術革新を促進するモデルも併せて検討すべきだ」と述べた。
キム教授は、米中の技術競争が激化する国際環境の中で、法が過度に先行したり規制中心で制度設計されたりすると、逆に革新の芽を摘むリスクがあると警鐘を鳴らした。また、法の施行令や具体的な規定については、業界の状況に応じて柔軟に調整する必要があると強調した。
AI倫理と安全の重要性を強調する声も多い。ソウル教育大AI倫理認証教育研究センター長であるピョン・スンヨン教授は、法案の制定自体は肯定的に評価しつつも、倫理と安全の面で詳細な考慮が不足している点を指摘した。
ピョン教授は「法で定義された『高影響AI』の範囲はやや抽象的だ。人間の判断を代替したり、決定に深く関与したりするAIシステムであれば、より厳格な倫理基準が必要だ」と強調した。
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