
韓国・現代自動車グループが次世代自動運転車(SDV)とロボティクス技術の開発を加速させている。中核となるのは、米エヌビディア(NVIDIA)の最新GPU「ブラックウェル(Blackwell)」の導入で、2026年から順次投入される。これにより、高度なAI計算能力を備えた次世代モビリティの実現が一気に近づく。
現代自動車は2025年末の役員人事で未来車開発組織を再編。これまで独立していたR&D本部と自動運転開発(AVP)本部を、チャン・ジェフン副会長の指揮のもとで一体化し、開発効率の最大化を図った。R&D本部長にはマンフレッド・ハラー氏が就任し、AVP本部長は現在選定中だ。
注目されるのは、NVIDIA製の次世代GPU「ブラックウェル」の導入だ。韓国政府は10月、2030年までに26万枚のGPUを導入する計画を発表。そのうち現代自動車グループが割り当てられたのは5万枚。これは1秒あたり98エクサFLOPS(約9京8000兆回の演算)が可能となる計算能力だ。
メディアによれば、この規模はテスラに次ぐ世界第2位のAIトレーニング能力となり、現代自動車がテスラや中国勢に対抗する上で大きな武器になると見られている。
現代自動車は、AI・ロボティクスに最適化された物理的AIインフラを国内に整備する計画で、関連してロボットや水素エネルギーに特化したタスクフォース(TF)も新設した。傘下企業の現代オートエバーはSDV専任組織を立ち上げ、現代モービスもロボティクスを次世代の主力事業に育成するとしている。
韓国政府も、ペ・ギョンフン(裵慶勲)副首相兼科学技術情報通信相が「企業とタスクフォースを組み、毎年GPUの需給計画を共同で立てていく」と説明しており、公的支援体制も整いつつある。
これにより、現代自動車グループの未来車開発ロードマップは大きく前倒しされる可能性がある。2026年にはSDVの先行車「フェイスカー」を公開し、2027年からは市販車へのSDV技術の本格投入を予定。2028年には現在開発中のSDV専用OS「PLEOS(プレオス)」や自律走行AI「ARTIA AI」を搭載した次世代車の発表も計画している。
業界では、テスラの完全自動運転(FSD)技術の韓国市場進出が話題となる中、現代自動車が技術競争力で劣勢に立たされることへの懸念が高まっていた。業界関係者は「GPUの導入でAI演算能力が飛躍的に向上すれば、開発スピードも加速し、競争力を一気に引き上げる契機になる」と語っている。
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