
韓国のユン・ソンニョル(尹錫悦)氏が大統領職を罷免されたことを受け、次期大統領の執務室が現在のソウル市龍山区から移転されるのかに関心が集まっている。候補地としては世宗市や青瓦台(旧大統領府)などが浮上している。
政界関係者によると、次期大統領選挙後、新大統領が執務室を世宗市に移すことへの期待が高まっている。野党「共に民主党」は、ノ・ムヒョン(盧武鉉)氏が大統領時代に推進しながらも実現しなかった「行政首都・世宗市」構想を、イ・ジェミョン(李在明)代表の指示のもとで再び推し進めている。
イ・ジェミョン氏は3月初旬の党幹部会議でも、執務室の世宗移転について検討を指示していた。これは早期大統領選を視野に入れた動きとみられる。前回の大統領選でも、イ・ジェミョン氏は「行政首都の明文化を含む憲法改正」と「世宗市への大統領執務室設置」を公約に掲げていた。
世宗市移転案は、首都圏の過密解消や、選挙でキャスティングボートを握る忠清地域の民意を得る狙いがある点からも有力な選択肢とされ、他の次期大統領候補らも支持の意を表明している。
こうした期待を受け、低迷していた世宗市の不動産市場も再び動き始めている。KB不動産院の「週間アパート市場動向」によれば、3月の変動率は10日が-0.07%、17日が-0.06%、24日が-0.04%と続き、31日には0.00%となり、下落から横ばいに転じた。
ただ、現実的には世宗市への移転は容易ではないとの見方もある。憲法改正など複雑な法的手続きが必要であり、2004年には憲法裁判所が「韓国の首都はソウル」という慣習憲法を根拠に、新行政首都の建設を定めた特別措置法を違憲と判断している。
このため、次期大統領の任期中に執務室を移転するのは困難との見方が強い。その代替案として、青瓦台への再移転が有力視されている。選挙準備期間がわずか60日と短いため、新大統領がまずは青瓦台で任期をスタートさせる可能性が高い。
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