
韓国のイ・ジェミョン(李在明)大統領はこのほど、北朝鮮に向けて「戦争の終結」と「核のない朝鮮半島」を提案し、停滞する南北・米朝関係に新たな打開策を模索する姿勢を示した。北朝鮮との対話が途絶えた状況の中、大統領自身が「終戦」という政治的カードを再び取り上げた形だ。
最近開かれた第22期民主平和統一諮問会議の発足式で、イ・ジェミョン大統領は「戦争の心配のない朝鮮半島をつくる」と述べ、「休戦協定が締結されてから72年が経つが、いまだに恒久的な平和が定着していない」と指摘した。
続けて「戦争状態を終わらせ、核のない朝鮮半島を追求し、確固たる平和を定着させるための努力を続ける」とし、休戦状態にある朝鮮半島において「終戦協定」の推進意志を明らかにした。
これは9月に発表された「E·N·D(交流、関係正常化、非核化)」構想と同様の枠組みの中で非核化の意志を維持したものと解釈される。また、10月の韓米首脳会談で合意された「朝鮮半島の平和構築に向けた北朝鮮の非核化」路線が依然として有効であることも確認した形だ。
ただし、約4000字におよぶ演説の中で「非核化」という直接的な表現は用いず、「核のない朝鮮半島」という柔らかい言葉で代替した。これは、北朝鮮のキム・ジョンウン(金正恩)朝鮮労働党総書記が「非核化を議題としないこと」を米朝対話の前提条件として示していることを意識したとみられる。
今回の「終戦宣言」提案は、2018年のムン・ジェイン(文在寅)政権時代にも南北首脳が合意したが、最終的には実現しなかった。2007年にもブッシュ米政権が同様に提案し、キム・ジョンイル(金正日)総書記が原則的に同意した経緯がある。
しかし、2019年の米朝首脳会談(ハノイ会談)の決裂以降、2021年にムン大統領が国連総会で再び終戦宣言を提起した際、北朝鮮側は「興味深いが、敵対政策が撤回されない限り協議には応じられない」と反発した。
それでもなお、現政権がこのカードを再び掲げたのは、北朝鮮を交渉の場に引き出す「呼び水」として終戦宣言を活用しようとする意図があるとみられる。終戦協定には米国や中国の関与も必要とされるため、多国間の枠組みで問題解決を図ろうとする姿勢といえる。
これに関連して、梨花女子大学のパク・ウォンゴン教授は「単に終戦宣言を繰り返すだけでは北朝鮮の関心を引けない。構造的な平和体制への転換を模索する必要がある」とした。
イ・ジェミョン大統領も、北朝鮮の応答を引き出すためには米国の協力が欠かせないと強調。「トランプ前米大統領も朝鮮半島の戦争状態の解消に努力すると明言した」とし、「韓米共助を通じて平和定着に努める」と述べた。
演説では、まず「核のない朝鮮半島」に言及した後、「平和共存の時代に進むべきだ」とし、軍事的衝突の回避、分断による人道的苦痛の解消、南北間の連絡チャネルの復旧の必要性を訴えた。
さらに「南北の共同成長のため、気候環境・防災・保健医療などの分野で交流協力を段階的に進める」と述べた。これは政府の対北朝鮮政策の優先順位が「非核化→平和共存→共同成長」であることを示唆している。
一部では「非核化」が後回しにされるのではという見方もあったが、今回の演説ではそれを最上位に置いた形となった。パク・ウォンゴン教授は「非核化と南北協力は切り離せず、同じ文脈で議論すべきだ。非核化を避けて通るわけにはいかないため、最初に取り上げたのだろう」と述べた。
東国大学のキム・ヨンヒョン教授も「非核化は最も重要な課題であり、すべての対北朝鮮政策の核心だ。まずそれを強調したのは当然。北朝鮮が敏感なため『核のない朝鮮半島』という表現に留めた」と評価した。
政府関係者によれば、今回の発言は対北政策の「目標」というよりは、より広い「ビジョン」を提示したものだという。
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