
ディープフェイクや違法撮影物など、性犯罪関連のデジタル映像を削除するため、韓国政府がこれまでに取った措置は91万件以上にのぼるが、その費用を加害者に請求した事例は一度もなかったことが分かった。
女性家族省の資料によると、同省はこれまで一度も削除費用に対する求償権を行使していなかった。
同省傘下の「デジタル性犯罪被害者支援センター」は2018年の設立以来、ディープフェイクなどを含む性犯罪映像の削除を支援しており、昨年だけで30万2397件、累計では91万1560件に達している。
同センターでは、AIによる自動検出技術がまだ十分ではないため、専任スタッフが手作業でインターネット上の映像を検索し、プラットフォーム運営者に削除を依頼する形をとっている。その人件費などコストも無視できない規模とみられる。
現行の「性暴力防止および被害者保護法」第7条の3項は、国が削除費用を支出した場合、加害者に対して求償権を行使できると定めている。対象は、違法映像の制作・流布や被害者を脅迫したりした者だ。
しかしこれまで、この求償権は事実上機能していなかった。背景には、加害者の住所や犯罪歴など、削除費用の請求に必要な個人情報を捜査機関から得る法的根拠がなかった点がある。
昨年の法改正により、今年4月17日から施行された改正法により、ようやく法的根拠が整ったものの、実際に求償するための基準や手続き、費用算定方法はまだ整備されていない。
同省は「今後の検討と協議、そして基礎研究が必要であり、来年度に向けて関連予算の確保を進めている」と説明している。
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