
韓国のユン・ソンニョル(尹錫悦)前大統領の妻キム・ゴニ(金建希)氏をめぐる疑惑が拡大している。特別検察官チームによる捜査の中で、側近や関係者の証言が相次ぎ、キム・ゴニ氏が大統領権限に介入したとの「国政介入」疑惑が強まっている。
特別検察官チームは8月18日、キム・ゴニ氏を6時間にわたり事情聴取した。政治ブローカーのミョン・テギュン氏は2022年の補欠選挙で与党候補の公認をめぐり、キム・ゴニ氏が与党議員と通話し、夫のユン・ソンニョル大統領(当時)と人事権・公認権を「五分五分」に分ける約束を交わしたと証言した。だがキム・ゴニ氏は調べに対し黙秘を続け、関与を否定している。
建設大手「瑞煕(ソヒ)建設」のイ・ボングァン会長は自首し、キム・ゴニ氏に総額数千万円相当の高級ブランド品を渡したと供述した。なかでも2022年北大西洋条約機構(NATO)首脳会議の際、キム・ゴニ氏が着用して物議を醸した6200万ウォンのネックレスをはじめ、「NATOー3点セット」と称される高級アクセサリー一式を贈与したと明かした。さらに、検事出身の娘婿の人事を依頼したと認め、いわゆる「売官」疑惑が浮上した。イ・ボングァン会長はまた、キム・ゴニ氏がソウル三清洞の政府施設を私的に使用して自らを呼び出したとも述べ、私的利用問題にも発展した。
別の事業家でロボット犬輸入業を営むソ・ソンビン氏は、キム・ゴニ氏から大統領府広報首席のポストを打診されたと証言した。ソ・ソンビン氏はキム・ゴニ氏に5000万ウォン相当の高級時計を贈ったとされるが、「3500万ウォンで購入し500万ウォンのみ受け取った」とし、利益は得られなかったと主張している。それでもソ・ソンビン氏は、宇宙航空庁や「ロボット庁」創設を提案し、キム・ゴニ氏が前向きな反応を示したと証言している。
こうした一連の証言を受け、与党・共に民主党は「VO国政介入」だと批判した。VOは「V1(大統領)より上」を意味する政治・官界での隠語で、キム・ゴニ氏が実際の権限を掌握していたとの皮肉を込めた表現だ。
さらに市民約1万2000人は同日、ユン前大統領夫妻を相手取り慰謝料請求訴訟を起こした。原告団は、ユン政権末期に発動された非常戒厳令は「キム・ゴニ氏の刑事責任回避のためのもの」だと主張し、「ミョン・テギュンゲート」の証拠隠滅に国家権力が私物化されたと非難している。
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