韓国で高齢者虐待の中で身体的虐待がこの10年間で3倍、精神的虐待が2倍に増加していることが明らかになった。全体の虐待件数における身体的虐待の割合も2014年の25%から昨年には43%まで増加している。
韓国保健福祉省が発刊した「2023年高齢者虐待現況報告書」によると、昨年の高齢者虐待の発生件数は1万638件で、前年より0.9%増加した。1人の高齢者が複数の虐待を受けるケースもあり、その場合は重複して統計に含まれている。
虐待の種類別にみると、身体的虐待と精神的虐待が全体の85.3%を占めており、身体的虐待は4541件(42.7%)、精神的虐待は4531件(42.6%)であった。他の虐待は、放置758件(7.1%)、経済的虐待352件(3.3%)、性的虐待265件(2.5%)、自己放任(セルフネグレクト=生活意欲の衰えなどから身の回りのことができなくなる)165件(1.6%)、遺棄26件(0.2%)と続く。
身体的虐待は2014年の1426件(24.7%)から2018年に3046件(37.3%)、2020年には3917件(40.0%)に増加し、2022年には4431件(42.0%)となり、昨年には4500件を超えた。一方で、精神的虐待は2014年の2169件(37.6%)から増加傾向にあるものの、全体に占める割合は42~43%の間を推移している。
これに対し、経済的虐待は2014年の521件(9.0%)から昨年の352件(3.3%)に減少し、放置や自己放任も同様に減少傾向を示している。
保健福祉省によると、高齢者虐待の報告件数が増加したことが身体的虐待や精神的虐待の件数、割合増加に影響を与えている可能性が高い。2023年の全体の虐待報告件数は2万1936件で、2014年の1万569件から2倍以上に増えている。また、近年増加している高齢夫婦のみの世帯も虐待増加の背景にあると分析されている。子供と同居していない高齢夫婦世帯では、虐待行為者が息子よりも配偶者であるケースが増加しているという。
昨年の身体的虐待被害者は女性が78.7%を占め、精神的虐待でも女性の割合が79.4%であった。加害者では身体的虐待において配偶者が48.9%で最多となり、息子28.6%、娘7.5%、施設職員6.1%が続いた。精神的虐待の場合も配偶者が47.5%で最も多く、息子32.1%、娘8.9%、その他3.8%の順であった。
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