
韓国で「捜査と起訴の分離」を柱とする新たな刑事司法体制が今年10月に始動する。6月3日の統一地方選挙後に集中すると見られる選挙犯罪が、その成否を左右する最初の試金石になるとの見方が強まっている。
選挙犯罪は公訴時効が6カ月と短い一方で、事実関係が複雑な「高難度捜査」とされる。警察の組織再編や検察の補完捜査権縮小が重なれば、捜査の空白が生じるとの懸念が法曹界で広がっている。
関係者によると、検察と警察は第9回統一地方選挙後、少なくとも3000件、多ければ4000件以上の公職選挙法違反事件が全国で同時多発的に発生すると見込んでいる。前回2022年の地方選では3790人、2018年は2111人が立件された。2026年は人工知能を利用したディープフェイク技術が不正選挙に悪用される可能性もあり、捜査は一層難しくなりそうだ。
膨大な事件を6カ月以内に捜査から起訴まで進める必要があるため、選挙後は毎回、捜査機関が非常態勢に入る。2022年9月の検警捜査権調整以降、選挙犯罪は警察が直接捜査を担い、検察が補完捜査で関与してきた。ただ、新設される重大犯罪捜査庁の対象外とされるため、今後は現場の警察に負担が集中する可能性が高い。
問題は、新体制が地方選から4カ月後の10月2日に発足する点にある。公訴庁は名称変更に近い形とされるが、重大犯罪捜査庁は新組織として立ち上げが必要で、庁舎選定や人事配置など大規模な再編が求められる。
さらに、検察の補完捜査権の扱いも大きな焦点となっている。現行法では権限は維持されているが、地方選後の法改正で大幅な縮小や廃止に至る可能性が指摘されている。
選挙犯罪の経験が豊富な検察関係者は「麻薬や経済事件以上に難しいのが選挙犯罪だ。法改正が頻繁で事実関係も複雑なため、検察官でも徹夜で対応することが多い」と指摘し、「警察だけで十分に処理できるかは不透明だ」との見方を示した。
また、元検察幹部の弁護士は「ベテラン捜査官が新組織に多数配置されれば、10月時点では選挙事件の捜査が佳境にあるか、送致直前の段階になる」とし、「捜査が後回しになり、内容が不十分になるおそれがある」と懸念を示した。
法曹界では、新体制が既定路線となる中でも、捜査の質を維持するために最低限の補完捜査権を残すべきだとの意見が根強い。ある地検幹部は「10月2日以前に送致された事件は公訴庁が補完捜査で最終確認できるが、それ以降は警察の捜査だけで完結する可能性がある」と述べ、捜査品質への影響を指摘した。
また、検察出身の弁護士は「補完捜査権がなくなれば、今回の地方選関連事件で不十分な結論が増えるおそれがある」とし、「補完捜査の要求権だけでは、公訴時効が短い事件を期限内に処理できない可能性がある」と指摘している。
警察内部でも補完捜査の必要性を認める声がある。首都圏の警察幹部は「通常は警察が約4カ月捜査し、検察が約2カ月補完する形で進む」とし、「今後は双方の連携が一層重要になる」と述べた。
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