韓国のユン・ソンニョル(尹錫悦)大統領の弾劾をめぐる政治情勢が、一般家庭での人間関係にまで影響を及ぼしている。政治的意見の違いから、家族との会話を避ける人が増え、旧正月の家族団らんがストレスの原因となるケースが多発している。
ソウルに住むキム・ドンヒョンさん(33)は「旧正月の親戚の集まりを考えるだけで頭が痛い」と語る。昨年末、従姉妹が「不正選挙」について語り始め、それに対して野党「共に民主党」支持者である父親が激昂し、大声で言い争う事態になったという。「幼いころから仲の良かった従姉妹なのに、そんな話を信じる姿を見てから話すのが気まずくなった」と嘆いた。
一方で、親との意見の相違が原因で帰省を躊躇する人もいる。大邱(テグ)出身の23歳女性は「極右的なYouTubeから得た情報を繰り返す両親とは話が通じない。『非常戒厳』が問題だと指摘すると、両親は私を軽蔑するような目で見た」と語る。
また、大田(テジョン)出身の40代男性も「父が『不正選挙』の疑惑を信じているので、議論になるのが嫌で帰省を諦めようか迷っている」と悩みを明かした。
一方で、政治情勢をきっかけに家族との対話が増えたケースもある。
51歳女性は「両親は以前、パク・クネ(朴槿恵)元大統領の弾劾に反対してデモに参加していたが、今回はユン大統領の非常戒厳宣布に否定的な共通認識を持つことができた」と話し、政治を通じて家族間の会話が活発になったと述べた。
専門家は、家族内の政治的分裂が社会全体の分極化を助長する可能性を指摘し、家族内での尊重と配慮の重要性を強調している。
成均館大学社会学科のク・ジョンウ教授は「家族はすべての社会の基盤であり、家族内での不和が世代間の対立に発展する可能性がある」と警鐘を鳴らす。また、全北大学のソル・ドンフン教授は「自由民主主義社会では、家族全員が同じ政治的意見を持つことはあり得ない。個々の選択を尊重する姿勢が必要だ」と述べた。
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