
1980年に韓国で起きた民主化運動「5・18光州事件」を巡り、北朝鮮の指令を受けたスパイが戒厳軍を攻撃した――AIによってこんな内容にねつ造された地元紙・光州日報の紙面画像が、インターネット上で拡散している。悪用された光州日報は、歴史を歪曲する悪質な虚偽情報だとして、警察への通報を含めた法的措置に乗り出す方針だ。
問題の画像は今月中旬以降、フェイスブックなどのSNS上に流布した。「1980年5月20日付の光州日報」と題され、覆面姿の男たちが北朝鮮スパイの指揮下で武器庫を略奪し、戒厳軍を無差別攻撃したという趣旨の写真風の画像と文章が掲載されていた。
これを見た一部の保守系ネットユーザーが「暴徒のせいで市民や軍警が犠牲になった。真実を明らかにしろ」などと反応したことで拡散。一方で、別のユーザーらからは「光州日報は、事件当時には存在しなかった新聞社。AIで作られた明らかなデマだ」との反論が相次いだ。
メディア史の記録によると、1980年の事件当時、光州地域で発行されていた地方紙は「全南毎日新聞」と「全南日報」の2紙のみ。現在の「光州日報」は、事件後の同年11月にチョン・ドゥファン(全斗煥)新軍部政権が主導した言論統廃合(メディアの強制統合政策)によって誕生した題号であり、1980年5月の時点では存在していなかった。
特に当時の全南毎日新聞は、新軍部の検閲によって光州事件の凄惨な実態を一切報道できなかったことに抗議し、記者らが集団で辞表を提出して抵抗したことで知られる。当時の記者らは辞表に「私たちは見た。人が犬のように引きずられ、死んでいくのをこの目ではっきり見た。しかし新聞には1行も載せられなかった。ゆえに私たちは恥じて筆を置く」と書き残していた。
光州日報は、歴史的な事実関係を無視して同社の信頼性を傷つける行為を重く見ており、法的対応を通じて偽画像の作成者や拡散者の責任を追及する構えだ。
(c)news1