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韓国の人気アイドルグループ「NewJeans(ニュージーンズ)」を取り巻く問題が芸能界を騒がせるなか、韓国ゲーム業界にも「ゲーム業界版NewJeans騒動」と呼ばれるものがある。その節目となる裁判の判決が最近、言い渡された。
◇紛争の経緯
ゲーム業界の騒動は、韓国のスタジオ「IRONMACE(アイアンメイス)」が手がける「DARK AND DARKER」という作品をめぐるもの。
「DARK AND DARKER」は2023年2月、オンラインゲームプラットフォーム「Steam」でプレイテストが始まるやいなや大人気となり、多くのプレイヤーを獲得した。だが、韓国オンラインゲーム大手「NEXON(ネクソン)」がこの「DARK AND DARKER」の著作権に関連してIRONMACEを提訴したのだ。
その主張によると、IRONMACEの代表はもともとNEXONの社員で、「P3」という仮タイトルの新作ゲームの開発を主導していた。この社員は開発中のゲームに関する内部情報を持ち出してNEXONを退社した。その後、自らのスタジオ「IRONMACE」を立ち上げ、「P3」のデータを流用するように「DARK AND DARKER」を開発した――といい、こうした行為は著作権侵害および営業秘密保護法の違反だとしている。
RONMACE側は「ゲームの類似性は単なるアイデアの組み合わせにすぎない」と反論したうえ「NEXONが中小ゲーム開発会社を圧迫している」と反発していた。
この裁判の判決が先月13日、ソウル中央地裁で言い渡された。地裁は、IRONMACEがNEXONの「P3」の著作権を侵害していないと判断しながらも、IRONMACEの創業者らがNEXON退社時に「P3」関連データを持ち出したことが営業秘密の侵害に当たるとして、NEXONに85億ウォンの損害賠償を支払うよう命じた。
この損害賠償額は、NEXONが請求した全額が認められた。訴訟費用もNEXON20%、被告側80%の割合で支払うよう判決が下されたため、事実上、NEXONの全面勝訴と評価されている。
約4年にわたる法廷闘争の末、NEXONが事実上の勝利を収めたことで、ゲーム業界で頻発する著作権侵害論争が今後どう変化するかに注目が集まっている。今回の判決は、両社の刑事訴訟のみならず、業界全体の著作権紛争における重要な判例となりそうだ。
長引く訴訟により「DARK AND DARKER」の市場での関心は冷め、IRONMACEの支援者だった韓国の大手ゲーム会社「KRAFTON(クラフトン)」も手を引いた。
◇NewJeans騒動
この騒動は、K-POP業界における「NewJeans騒動」と比較されている。
大手芸能事務所HYBE(ハイブ)は、ADOR(アドア)という子会社を設立してミン・ヒジン氏を代表として迎え、高額報酬と全面的な権限を与えたうえで、NewJeansをデビューさせた。
しかし、ミン・ヒジン氏は、NewJeansの人気が高まると、ADORを自分の会社として独立させようと画策し、その計画が露見したことで代表の座を追われた。
ミン・ヒジン氏はHYBEを相手取り、ADORの代表職復帰を求める訴訟を提起したものの、裁判所はHYBEの主張を認めた。
その後、NewJeansのメンバーをADORから引き離す動きを見せており、いわゆる「タンパリング(契約終了前の事前接触)」問題が浮上している。
NewJeansのメンバーはミン・ヒジン氏に同調する形で行動し、ADORとの契約が約5年残っているにもかかわらず、一方的に契約解除を通告。グループ名も「NJZ」に変更し、独自の活動を開始した。
◇二つの事例の共通点と相違点
ゲーム会社にとっての核心的資産は「ゲーム」であり、エンターテインメント企業にとってのそれは「アイドル」だ。責任者がその資産を持ち出そうとした点で、「DARK AND DARKER」事件とNewJeans騒動は類似している。
ただし、大きな違いもある。
「DARK AND DARKER」はリリース前のプロジェクトが持ち出されたのに対し、NewJeansはデビュー後に騒動が起きた。アイドルには「ファンダム」と親の存在があり、ゲームとは異なる影響力がある。
◇K-POP業界の反応と今後の展開
NewJeans騒動を巡って、K-POP業界からは強い反発が出ている。韓国マネジメント連合、韓国芸能制作者協会、韓国音楽レーベル産業協会、韓国音盤産業協会、韓国音楽コンテンツ協会の5団体は「タンパリング根絶」を求める声明を発表し、NewJeans側の行動を非難した。
ADOR側は、メンバーに対する給与未払いもスケジュール管理の問題もなかったにもかかわらず、一方的に契約を解除したことがK-POP業界の基盤を揺るがすと指摘している。
最終的に、この問題も法廷に持ち込まれることとなった。ADORがメンバーを相手取り提起した「事務所の地位保全および広告契約締結禁止仮処分」の審問は3月7日、専属契約の有効性を確認する訴訟の第1回審問は4月3日に開かれる。
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