韓国政府が医学部の定員拡大を推進する。具体的な数字は確定していないが、大規模な増員の可能性がある。保健福祉省はこのほど出した「必須医療革新戦略」を通じて、地方の国立大学を中心に医学部の定員を拡大すると明らかにした。教育省は専攻と連携した医大生の選抜も検討する。今でも医学部に優秀な人材が偏っている中で、定員拡大は入試環境全般に大きな影響を与えそうだ。
政府が医学部の定員を増やそうとしているのは、必須医療の空白が深刻な水準に達しているからだ。実際、医師が不足して「救急室たらい回し」などという単語が日常化した。政府が医療界の反対にもかかわらず、医学部の定員拡大に強い意思を示している理由だ。
残った課題は「どれだけ」「どのように」増やすかだ。増員規模は福祉省が医療界と協議しなければならない。現在、医学部の定員は3058人だ。06年以降、一度も調整されていない。医療界はこのような動きに反対している。福祉省は「医学部の収容能力と入試変動などを考慮して段階的に増員する」と説明した。
医学部の定員をどのように増やすかという問題は、教育省の所管だ。教育省は増員規模が拡大されれば、各大学別に配分する方針だ。適用時期は2025学年度からだ。イ・ジュホ副首相兼教育相はマネートゥデイとの単独インタビューで「地方の国立大学を中心に医学部の定員が増えるだろう」と話した。ただ、ソウル首都圏に位置する医学部の定員を完全凍結する意味ではないことも明確にした。
教育省は専攻と連携した医学部定員拡大を大学総長らと協議している。学生が3年時に医学部専攻を選択できるようにする案だ。イ副首相は「4年間で専攻の需要が変わる可能性があり、学生たちに十分に選択できる機会を与えることが最も重要だ」と強調した。
いかなる方式であれ、医学部定員が増えれば、受験生の立場では変数として作用せざるを得ない。これに対し、医学部に人材がさらに偏るのではないかとの指摘が出ている。実際、最近は医学部合格者のうち浪人以上の「N受験生」比率が急増している。受験生の人気が高い9つの国立大学と9つの首都圏私立大学医学部の2020~2022学年度合格者の中でN受験生比率は78.7%に達した。
医学部の合格ラインが、主要大学の最上位学科の合格ラインを追い越している点を勘案すると「連鎖移動」現象が生じる可能性がある。学生たちが、いわゆる「SKY(スカイ)」と呼ばれるソウル大、高麗大、延世大の自然系上位学科から大挙離脱し、医学部を志望する可能性への懸念だ。既に最上位圏の大学在学生のうち、医学部進学のために自主退学するケースは珍しくない。
大学受験予備校「鍾路学院」のイム・ソンホ代表は「入学定員を増やせば合格ラインは下がらざるを得ず、一般学科を目指していた学生でさえ医学部進学を考えるようになるかもしれない。理工系はもちろん一般文系学生の仮面浪人や『N受験生』の挑戦が増え、最上位圏の学科をはじめ他の学校まで仮面浪人や編入が多くなりかねない」とみる。
医学部に人材が偏る中で、就職が保障された理工系学科も問題が浮上している。鐘路学院によると、2023学年度の高麗大と西江大、延世大、漢陽大の半導体関連学科の募集で、定員の155.3%に達する人員が登録をやめた。彼らの相当数が医・薬学系に行くものとみられる。イム代表は「政府は医学部の定員を増やすとともに、精巧に大学入試政策を設計しなければ大混乱を招きかねない」と話す。
医学部の定員拡大が大学入試に大きな変数として作用するだろうが、地域社会のために避けられない決定だという見方もある。イ副首相は「地方の医学部における地域人材選抜比率は40%以上だが、これを充足する場合、さらにインセンティブを与える方式でさらなる地域人材選抜を誘導する」と語った。
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