
人工知能(AI)技術が急速に発展し、世界各分野に導入が広がるなか、ファッション業界でもその活用が本格化している。トレンド予測からデザイン・製造・マーケティング、さらには個人向けスタイリングまで、多様な領域でAIを活用した実験が進められている。
業界関係者によると、AIが最も多く導入されているのはマーケティング分野だ。モデルやスタジオを手配して撮影するよりも、生成AIを使ってその場で必要なイメージを作るほうが、時間とコストを大幅に削減できる。
AIを使えば、さまざまな体型・年齢・人種のモデルを自由に生成でき、肖像権の制約も受けない。世界的コンサルティング企業マッキンゼーは、生成AIの活用によって2030年までにファッション業界の営業利益が1500億~2750億ドル増加すると予測している。
韓国のLFブランド「HAZZYS」は、AIによる短編映画形式の広告キャンペーン「ロウイングクラブ」を制作・公開し、コレクションの売り上げが前年より10%増加したという。AI映像がMZ世代(1980年代~2000年代初旬の生まれ)攻略に効果的だったと評価されている。
モデルだけでなく、ファッションデザイン分野でもAI技術が導入されている。2023年にはニューヨークで初の「AIファッションウィーク」が開催され、デザイナーたちはMidjourney(ミッドジャーニー)やDALL·E2などのAI技術を活用したバーチャル衣装を出品。韓国企業が開発したAIデザイナーも参加した。
ただ、「AIが生成する画像はまだ完成度が不十分」との指摘もある。消費者の信頼を得るためには、主要ブランドや主力商品では依然としてプロのモデルや写真家による撮影が必要だとする声も多い。
AIはまた、個人化された商品推薦サービスにも広く使われている。消費者の行動データを分析し、嗜好やライフスタイルに合わせた商品を提案する仕組みだ。
AIが素材・カラー・サイズなどの属性を自動的に分類・データ化することで、より精密な検索や推薦が可能になった。
韓国のファッションプラットフォーム「MUSINSA(ムシンサ)」では、AI広告推薦システム導入後、中小ブランドの売り上げが前年の6倍以上に増加。カカオスタイルの「ZIGZAG(ジグザグ)」でも、AI個人化推薦を導入した結果、2024年10月〜2025年1月の間に同一店舗で2回以上購入した顧客が前年同期比23%増加した。
サムスン物産ファッション部門はオンラインストア「SSFショップ」で3Dバーチャル試着サービスを提供。顧客が体型データを入力すると、AIモデルが着用したシミュレーション画像を確認できる。
韓国ファッション協会は10月14日、「2025衣類製造イノベーションフォーラム」を開催し、AI・ヒューマノイドロボット・デジタルトランスフォーメーション(DX)を基盤とした製造技術革新の方向性を提示した。
業界関係者は「ファッショントレンドの変化は非常に速く、AIシステムの導入はもはや避けられない。今後は消費者がショッピングモールを1つずつ検索する時代ではなく、AIアシスタントやブラウザーがファッションを推薦する時代になる。その準備が鍵になる」と強調した。
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