
韓国のIT大手ネイバー傘下でクラウドサービスを担うネイバークラウドが、日本市場においてAI(人工知能)技術を通じた社会課題の解決に力を入れている。業務支援ツール「LINE WORKS」やAI安否確認サービス「CLOVA CareCall」を軸に、災害対策や福祉現場など、日本社会の現場に即したソリューションを提供している。
同社が掲げるビジョンは、各国の文化や制度に根ざした「ソブリンAI(主権型AI)」の実現だ。これは、技術が単なる道具にとどまらず、社会的接点の中で人々を支える仕組みとして機能すべきだという考えに基づいている。
2015年に日本でサービスを開始した「LINE WORKS」は、メールやカレンダー機能が中心だった韓国版の「NAVER WORKS」を、日本のビジネス文化に合わせて再構成したもので、現在では7年連続で日本国内の有料業務用メッセンジャー市場でシェア1位を維持している。
大阪で開かれた記者会見で、ネイバークラウドのキム・ユウォン代表は「LINE WORKSは、チャット文化が根づく日本市場を的確に捉え、韓国のB2Bサービスの中でも最大規模の海外輸出事例となった」と語った。実際、現在の年間定期利益(ARR)は160億円を超えているという。
「LINE WORKS」は今や単なるメッセンジャーにとどまらず、AI機能を多数搭載した業務基盤へと進化している。音声記録の「AiNote」▽音声テキスト化の「Roger」▽AI通話応答「AiCall」▽クラウドカメラ分析「Vision」▽画像認識による文書処理「OCR」――など、企業や自治体のニーズに応じた機能拡充が進む。
特に日本で関心を集めているのが、災害・医療・介護といった現場での活用だ。LINE WORKSは緊急通報や災害支援時の連絡網として活用されており、災害ボランティアや救急隊が現場で迅速に情報共有できる手段として注目されている。
さらに、AI安否確認サービス「CLOVA CareCall」は、高齢者世帯やひとり世帯に対する月1~2回の自動電話確認と、その結果を福祉担当者へ共有する仕組みを提供。すでに島根県出雲市と連携協定を結び、2026年4月の本格運用開始に向け準備が進められている。
同社AIソリューション責任者のキム・ドンフェ氏は「日本語対応の精度向上を目的に、音声認識と合成、会話モデルの最適化を重ねている」と話し、自治体福祉サービスとの連携強化も進めているという。
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