現場ルポ
「麻薬清浄国」と呼ばれた韓国。その地位は既に「麻薬危険国」に変貌して久しい。SNSで最近、簡単に麻薬を手に入れたり、バイク便で麻薬を受け取ったりするなど、新手の麻薬事件が絶えない。芸能人ら有名人の麻薬犯罪報道もさらに頻繁になった。韓国政府が実態に合わせて、対応を強化すべきだという声が高まっている。
◇麻薬事件、今年は9月までに1万3708人摘発
最高検察庁の麻薬取締現況資料によると、2015年以降、麻薬事件で摘発されているのは毎年1万人台。2020年には1万8050人、昨年は1万6153人と推移し、今年は1~9月で1万3708人が摘発されている。
深刻なのは、麻薬に接する年齢層が低くなっている点だ。
20~29歳の麻薬事件は2019年には3521人だったが、2020年は4493人に増え、昨年は5077人に増加した。19歳以下の場合、同期間で239人→313人→450人と、3年間で44%増加した。
また、最近は医療用麻薬類の危険性を認知できず、非医療目的(ダイエットなど)で使用し、需要が増加するにつれ、違法販売・誤用・乱用が広がり、社会問題化している。
◇テレグラム・ツイッターなどで簡単に購入
韓国国会もこうした事態を重くみている。
10月7日に開かれた国会保健福祉委員会食品医薬品安全処国政監査で、野党「共に民主党」のチョン・ヘスク議員は、暗号資産(仮想通貨)やダークウェブを利用した麻薬取引が、2019年の82件から2020年には748件に激増したと指摘した。チョン議員は「テレグラムを利用し、暗号資産で麻薬を取引し、ツイッターには大麻、ヒロポンなどの単語が1~2分に1回ずつ上がってきている」と危惧した。
同党のカン・ソンウ議員も「麻薬事件の54%が20~30代であり、違法購入者10人のうち7人がテレグラムを使って、麻薬を簡単・迅速に入手している。保健福祉省が10年ぶりに麻薬使用実態を調査したところ、20代と高学歴者の比率が増え、20歳以下の割合も高くなった」と強調している。
韓国では既に麻薬がまん延し、もはや「危険国」に転落した、という実態のようだ。にもかかわらず、政府は「韓国は清浄国」という錯覚に長年陥っていた。
麻薬対策が疎かになった背景には、主幹省庁において専門に担当する組織がはっきりさせず、おざなりに対応してきたことに問題があることが明らかだ。
政府の資料によると、麻薬の場合、検察と警察が取り締まり・捜査を担い、国家情報院と関税庁は麻薬密輸情報を収集、保健福祉省は麻薬類処方情報を管理する。食品医薬品安全処が▽臨時麻薬類の指定・流通取り締まり▽麻薬類統合管理システムの管理▽計画策定――などを担当し、麻薬類管理幹事省庁として活動している。
だが、政府の幹事機能を担う同処の麻薬安全企画官という組織が、存廃の岐路に立たされている――。
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