韓国ではまもなく2025年の大学修学能力試験(修能)が実施される。試験に支障が出ないよう、飛行機の離着陸を禁止するほど、韓国では修能が重要な大学入試制度となっている。
一方、北朝鮮にも似た制度があるが、その方式や意義は韓国とは異なっている。
北朝鮮の大学入試制度の最大の特徴は、当局が「大学推薦権割当制」を通じて、学生の大学受験資格を決定する点である。北朝鮮の高級中学校(韓国の高校に相当)に通う生徒が大学入試を受けるには、所属する学校から推薦権を得る必要がある。
推薦基準には「予備考査」と呼ばれる、試験の成績だけでなく、学生の出身成分や両親の政治思想も含まれる。北朝鮮の主要大学は教育機関であると同時に党の幹部養成機関でもあるため、国家への忠誠度が重視されている。北朝鮮最高の名門大学である金日成総合大学は、学内の教育や研究活動の目的を「党政策の制定・運営への貢献」と明記している。
このため、北朝鮮では成績よりも親の地位が大学入試結果を左右するという不満も出ているとされる。韓国では「資本」が教育格差を生み、大学入学に影響を及ぼすとされるが、北朝鮮では「階層」がこのような問題を引き起こしている。
社会主義的な無償・平等教育を目指す北朝鮮でも、韓国ほどではないものの「大学の序列化」や「過度な私教育」といった問題を抱えている。
北朝鮮には金日成総合大学、金策工業総合大学、高麗成均館大学の3つの総合大学があり、その他にも単科大学が多数存在する。学生たちの間では、この3つの総合大学を含め、平壌近郊の10校余りの大学が特に高く評価されているという。
このような状況により、私教育の競争も起きているとされる。1990年代の「苦難の行軍」以降、伝統的な計画経済体制が弱まり「市場化」現象が進む中、教育分野でも当局の公的役割が弱まったことで個人の負担が増えているためだ。
また、キム・ジョンウン(金正恩)総書記が自力で経済難を克服する目標を掲げ、これを達成するために「全国民の科学技術人材育成」を国家発展戦略として宣言し、教育の重要性が増し、これに伴い競争も激化している影響もある。
ただし、こうした問題は少数の上位階層にのみ当てはまる話である。2019年の韓国教育省と統一研究院の資料によると、大学進学率が韓国では約70%に達するのに対し、北朝鮮では10~15%程度にとどまっている。
北朝鮮では残りの大多数の学生は、男性は軍に動員され、女性は工場や農村などの職場に配属される。彼らが再び大学入試に挑戦するには、男性は10年間の軍務を終えた後に、女性は職場での勤務と両立する必要があるため、事実上「浪人」という概念は存在しないとされている。
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