韓国内外の電気自動車(EV)メーカーが収益を上げるべく、模索を続けている。通常、EVは1台当たりの利益率は高くなく、強固な財政基盤のあるメーカーでなければ、「規模の経済」(事業規模が大きくなるほどに単位当たりのコストが小さくなり、競争上有利になる効果)を実現しにくく、挑戦が難しい分野だ。
このため、各社はプラットフォーム共有や中国製LFP電池(リン酸鉄リチウムイオン電池)を使って車両の価格を下げ、利益率を高める戦略で市場の攻略に乗り出している。だが、こうした戦略がEVインフラの不備による充電の問題を引き起こすとともに、韓国国内の補助金が特定ブランドの部品に集中しかねないという懸念も出ている。
◇韓国内外メーカー、LPF電池を積極活用
韓国の準大手自動車メーカー「KGモビリティ」は来月、トーレス(TORRES)プラットフォームを活用した中型級電気多目的スポーツ車(SUV)「トーレスEVX」を発売する。トーレスEVXは最低価格のものが4850万ウォン(1ウォン=約0.1円)で、補助金を適用すれば3000万ウォン台で購入できるという。
トーレスEVXの価格が一般EVに比べて低く設定された理由は、中国のEV大手「比亜迪(BYD)」のLFP電池を使っていると考えられるためだ。通常、EV開発において、専用電気プラットフォームとバッテリーに巨額の経費がかかる。KGモビリティはこれまでのプラットフォームに中国製バッテリーを搭載することで、価格の引き下げを実現できたわけだ。
LFP電池は既存のメーカーが使用する三元系正極材(NMC、ニッケル・マンガン・コバルトが主成分)より、走行距離・効率・重さなどで劣るものの、価格がはるかに安い。まだ「規模の経済」が実現していないEV市場において、1台当たりの利益率を高める方法でもある。
EVの利益率を高めようとするメーカーはLPF電池を装着した車を発売したり計画したりしている。
EV最大手の米テスラは、中国の車載電池最大手「寧徳時代新能源科技(CATL)」のLPF電池を搭載した後輪駆動の「モデルY RWD」を発売した。NCMを使用したモデルより充電距離が短いが、価格は5699万ウォンと、2000万ウォン以上安い。
起亜自動車も来月発売する「レイEV」にCATLのLFP電池を使っている。まだ価格は公開されていないが、補助金適用時に2000万ウォン台になるとみられる。
韓国国内だけでなく、海外メーカーもLFP電池を積極的に活用している。今年6月に公開されたボルボ「EX30」は、LFPとNCMを選択できるオプション制を取る。ユーザーの必要に応じて、さまざまな選択肢を準備する計画だ。
◇米IRA、欧州CRMAのような対応策がない
中国製バッテリーを搭載した車が増えるにつれ、1台当たりの原価は低くなる。通常、EVはプラットフォーム開発費用とバッテリーにより価格が決まるからだ。ある業界関係者は「メーカーがEV開発に積極的でないのは、まだ『規模の経済』に入っていないため。EV市場が儲かる市場になるまで待っている」とみる。
しかし、LFP電池は走行距離が短く、充電インフラが確立されておらず、「米国の消費者がEV充電インフラが不足していることを理由にEVの購入をためらっている」(米紙ニューヨーク・タイムズ)という状況にある。
また、EV補助金問題も見逃せない。中国産電気バスについては、韓国環境省が補助金を減らすなどの措置を取ったが、低価格のうえ品質が保たれたことで、むしろ占有率が高まった経緯がある。
乗用車も同様の状況になり、韓国のEV補助金が中国企業に流れる可能性が高まると予想される。米国はインフレ抑制法(IRA)、欧州は重要原材料法(CRMA)などにより、中国産を排除してこそ、支援金を出すという方式で政策を強化している。だが、韓国はこれといった対応策が整備されていない。
大林大学自動車工学科のキム・ピルス教授は「輸出国である韓国は、自国第一主義を展開する他の国と同じことはできない。これまでの政策をしっかり整え、問題を最大限解決する方法で競争力を高めなければならない」と強調する。
また、韓国自動車モビリティ産業協会(KAMA)のカン・ナムフン会長は次のように指摘する。
「さまざまな国のEVが韓国市場に進出している。市場安定化・競争力強化のために車種別に対応戦略を練るべきだ。特に中国のEVは韓国市場で攻勢を強めており、現行の電気バスと同様に、バッテリー性能・安全性・消費者保護の側面を考慮した、細部的かつ総合的な政策を考えるべきだ」
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