
韓国の退職年金の年平均収益率は約2%にとどまり、実質的に物価上昇率に追いつけていない。一方、豪州の退職年金制度「スーパーアニュエーション」は年間10%前後の収益を上げ、資産規模も世界3位に成長した。
この差はどこから来るのか。
豪州の制度は1992年に導入され、雇用主が給与の12%を強制的に拠出し、加入者は基金を選んで運用する仕組みだ。中途引き出しは65歳まで厳しく制限されており、長期投資が前提となる。結果、退職年金資産は1992年の1480億豪ドルから2025年6月には4兆3300億豪ドルに拡大した。過去5年平均の年収益率は7.9%、直近1年では10.2%を記録した。
豪州の成功要因として、専門家は「制度の義務化」「高い株式投資比率」「政府による制度整備」「基金間競争」を挙げる。特に株式など成長資産への投資比率は平均70%に達し、収益率向上につながった。
2013年からは加入者が選択をしなくても自動的に「マイ・スーパー」ファンドに加入する仕組みを導入し、資金が確実に投資に回る体制を整えた。また、2021年からは低成績の基金を淘汰する「ユア・フューチャー、ユア・スーパー」制度を導入。基準を満たさない基金は新規加入を受け付けられず、他基金と合併を迫られる。これにより基金間競争が激化し、収益率向上を目指す動きが加速している。
一方、韓国の退職年金は拠出水準が低く、資産形成のための投資や投資教育も不十分と指摘される。グローバルコンサルティング大手マーサーの調査によると、韓国の退職年金は過去5年の年平均収益率が2.86%にすぎず、消費者物価上昇率とほぼ同じで実質収益率は0%台だ。マーサーの世界年金指数では韓国は52.2点で48カ国中41位、数年にわたりCランクにとどまっている。対照的に豪州は76.7点で6位だ。
豪州の専門家は「韓国が制度改革で参考にすべきは、形式ではない。拠出水準を引き上げ、株式などの成長資産へ積極的に投資し、投資者教育を強化することだ」と指摘する。さらに、豪州金融規制当局が各基金の純収益率や手数料を定期的に公表して透明性と信頼性を確保しているのに対し、韓国は情報提供やリスク管理が不十分で、制度全体の信頼性が低いことも課題とされている。
専門家は「韓国退職年金が持続的に成長するには、投資収益率の向上と制度への信頼回復が不可欠だ」と口を揃えている。【MONEYTODAY キム・クニ記者】
(c)MONEYTODAY