
グローバルなPCゲーム配信プラットフォーム「STEAM」に、ヘイト表現を含むゲームが流通していることが問題となっている。韓国を含む各国政府が国内からのアクセスを遮断できるものの、プラットフォーム自体に削除を強制することは難しく、「ヘイトの死角地帯」を生んでいるとの批判が高まっている。
韓国で1980年に起きた「光州事件」(民主化を求める市民と軍が衝突し、160人以上が犠牲になった事件)を歪曲・貶めたゲーム「光州ランニングマン」が、STEAMで流通していることが確認された。これは法人ではなく、個人が制作したユーザー生成コンテンツ(UGC)とされる。
ゲームには「市民に遠慮なく暴力を振るえ」「光州市民への暴力は正当」などのメッセージが含まれており、光州における市民を「暴徒」「犯罪者」として描いている。
文化体育観光省所属のゲーム物管理委員会(ゲーム委)は、今年3月末に本作の国内アクセスを遮断したが、現在も海外からは問題なくプレイ可能な状態が続いている。
5・18記念財団は「文化体育観光省と外務省に削除を要請するための公文書発信を求める」と明かした。ゲーム委も、STEAMを運営する米Valve社にゲームの削除を要請する。
STEAMでは欧米を中心に反ユダヤ主義的なゲームも流通している。ADL(名誉毀損防止同盟)が発表した報告書によると、STEAMコミュニティの公開データからは数百万件規模のヘイトスピーチや極端主義的キーワードが確認されている。
報告書では、ヒトラーを主人公にして米ロサンゼルスの警察や軍を攻撃する「Fuhrer in LA」といったゲームも紹介された。ゲーム内ではナチスのシンボルやスローガンが無修正で表示されており、何ら規制がかかっていなかった。
これらのゲームは韓国国内での流通は遮断できるが、海外での削除を強制する法的根拠は乏しい。海外企業であるValve社に対して、韓国国内法を適用して強制力を行使するには限界がある。
今回の問題を最初に指摘したソ・ギョンドク誠信女子大学教授は「韓国政府が公文書の送付などで明確な立場を示すことも重要だが、それ以上に、社会全体で『このようなコンテンツは誤っている』という世論を形成することが大切だ」と強調した。
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