韓国のユン・ソンニョル(尹錫悦)政権の宇宙政策に専門家が憂慮している。新政権が「地域均衡発展」を大義名分に、新設の航空宇宙庁を慶尚南道(キョンサンナムド)泗川(サチョン)に置くことを決めた。各種の宇宙開発課題についても、個別目標ごとに毎回、「予備妥当性調査」を強制し、中・長期の発展戦略が事実上なくなったという指摘が出ている。
科学技術業界の関係者によると、韓国天文研究院や韓国航空宇宙研究院などの研究者らは、航空宇宙庁の立地と宇宙開発課題の予備妥当性手続きを巡り「長期ビジョンの不在が証明された」と批判した。
航空宇宙庁はユン大統領の大統領選挙公約の一つだった。新政権は、航空宇宙庁設立を推進すると強調し、引き継ぎ委員会が3日発表した国政課題で泗川に設置するとした。だが業界関係者は、宇宙開発関連研究所と機関が集中する大田(テジョン)・世宗(セジョン)地域への誘致を主張している。
これに対し、韓国天文研究院宇宙探査グループ長のムン・ホンギュ氏は「航空宇宙庁設立の議論は原点から再検討されなければならない」と主張する。
ムン氏は、米航空宇宙局(NASA)と探査科学・小惑星分野の協力をリードしている国内科学者の1人だ。昨年、小惑星が地球に激突するリスクを避けるため軌道を変えるNASAの「双小惑星軌道偏向試験」(DART=Double Asteroid Redirection Test)への参加要請を受けたりした。
30年近く研究に集中してきたムン氏は、航空宇宙庁の「地域均衡発展」を大義名分とする決定には同意できないという。
「海外は審議を経て合意された哲学とビジョンにのっとり宇宙開発関連中長期プログラムを推進する。だが、韓国はそうではない。ユン政権は今後20年、30年追求する宇宙戦略を考えなければならない」と指摘している。
©MONEYTODAY