2025 年 8月 21日 (木)
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韓国の原発輸出に“米国の壁”…チェコ案件で露呈した技術自立の限界

チェコ・ドコバニ原子力発電所の完成予想図=韓国水力原子力提供(c)news1

韓国水力原子力(韓水原)が進めているチェコ・ドコバニ原子力発電所建設プロジェクトを巡り、米国の原子力企業ウェスティングハウスと交わした契約が「不平等」だとして議論を呼んでいる。背景には、原子炉の基幹技術である加圧水型原子炉(PWR)の“原点技術”をウェスティングハウスが保有していることがある。

2025年初め、韓水原と韓国電力は、チェコへの原発輸出を巡る知的財産権(IP)紛争を終結させるため、ウェスティングハウスと契約を結んだ。この契約により、韓国が今後、小型モジュール炉(SMR)を輸出する際にも、ウェスティングハウスの「技術検証」が必要とされるほか、原子炉1基あたり数億ドルにのぼるロイヤリティを長期的に支払う内容が含まれているとされる。

これに対し「韓国の技術的自立を無視した不当な譲歩だ」との批判が出る一方で「国際市場で競争するためにはやむを得なかった」という見方もある。

実際、韓国は独自の原発設計・建設能力を高い水準で確保しており、APR-1400と呼ばれる国産型原子炉の開発に成功。冷却材ポンプ(RCP)や計測制御システム(MMIS)、設計コードなどの技術を自国で保有している。

しかし、APR-1400自体がウェスティングハウスが1957年に開発した加圧水型原子炉(PWR)技術を基盤としており、その原点技術の特許は依然としてウェスティングハウスが握っている。韓国は1987年から米国コンバスチョン・エンジニアリング(CE)社と契約を結び、技術導入と使用料支払いを通じて技術基盤を築いてきた。CEの特許はその後の企業買収を経て、現在はウェスティングハウスが保有している。

そのため韓水原の「技術自立」主張は部分的な正当性を持つものの、法的・技術的には完全な独立とはいえない構造になっている。業界関係者はこの関係を「スマートフォンにおけるサムスンやアップルと、初期特許を持つクアルコムやノキアの関係に似ている」と説明する。

韓水原のファン・ジュホ社長も2025年8月19日、国会産業通商資源中小ベンチャー企業委員会で「技術自立と原点技術の関係について国民への十分な説明が足りなかった」と陳謝した。

さらに、韓水原が原発輸出の見返りとしてウェスティングハウスに原子炉1基あたり最大6億5000万ドル相当の物資・サービス購入契約を結んだことも明らかになった。これはチェコのドコバニ原発受注が確定的になった2025年1月に合意されたものだ。

この契約に関して一部では「知的財産権紛争の早期解決を急いだ韓水原に、政府や大統領室からの政治的圧力があったのでは」との疑念も提起されている。

一方で、「ウェスティングハウスには供給網や施工能力がないため、最終的には韓国企業に契約が戻ってくる」という擁護論もある。

(c)news1

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